2018年8月27日 月曜日

第146回(2018年8月)タイの医療機関を受診~ワクチン・HIVのPEPを中心に~

 GINAのウェブサイトをみて、「タイではどこの病院に行けばいいですか」という問い合わせをしてくる人が大勢います。受診理由として最も多いのが「HIVのPEPはどこで受けられますか」というものです。また、HIV陽性の人から、「タイでHIVの治療を受けるならどこがお勧めですか」、という質問もときどき届きます。

 HIV関連以外では、「タイで病気や怪我をしたときにお勧めの病院はありますか」、というものはよくあります。最近は、「タイでワクチンをうつと日本とは比較にならないほど安いって聞いたんですけど......」という問い合わせも増えています。

 そこで今回は、タイで医療機関を受診するならどこがいいのかについて目的別に紹介していきたいと思います。まず、総論として次のポイントを押さえておきましょう。

・タイの社会保険を持っていないなら基本的には自費診療。突然の病気や怪我の場合は海外旅行保険が使えることが多い。

・タイで働いている人は(working permitを取得していれば)社会保険が使える。ただし、受診先は勤務先が指定する場合が多く、指定病院は(ときに設備が充分でない)公立病院となる。そういった病院では、日本語は通じず、医師以外の医療者は英語ができないこともある。

・「豪華な病院」にはたいてい日本語の通訳がいる。費用は高く救急車を呼べば数万円のことも。海外旅行保険が使えることが多いが、保険会社が認めなければ救急車の費用などは適用されないこともある。

・クリニックはたいてい自費診療。ただし日本と異なり病院とは費用に差があり、一般に病院よりも安い。タイ語ができれば問題なく受診できる。英語だけでも医師との対話はまずOK。

・夜間などクリニックが開いていない時間帯で「豪華な病院」を避けたい時は、タイ人が利用する公立病院受診を検討すればよい。クリニックと同様、タイ語ができれば問題なし。英語だけでも医師との対話はOK。

 だいたいこんなところです。ではバンコクの情報をお伝えします。チェンマイは後半に記します。今回は他の地域の情報はありません。

〇突然の病気や怪我が起こったとき

 バンコク近郊にいるときに「軽症」なら次の2つのクリニックは検討してもいいでしょう。日本人御用達のクリニックで日本語の通訳が常駐しています。下記URLも日本語です。

DYM+ Clinic
BLEZ Clinic

 「重症」の場合や上記クリニックが閉まっている時間であれば下記の3つのいずれかの「豪華な病院」が適しています。いずれも日本語の通訳がいます。下記URLも日本語です。

Bumrungrad International Hospital 
Samitivej Hospital
Bangkok Hospital 

〇HIVのPEP/PrEPを希望するとき 

 最もお勧めなのはタイ赤十字が運営する「Anonymous Clinic」http://en.trcarc.org/?page_id=632。タイではPEPは日本とは異なった使い方をします。(参照:Thailand National Guidelines on HIV/AIDS Treatment and Prevention 2017)

#1 テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(Tenofovir disoproxil fumarate)300mg + エムトリシタビン(emtricitabine)200mg(ツルバダ)
#2 リルピビリン(Rilpivirine)25mg 
#3 ラルテグラビル(Raltegravir)400mg(アイセントレス)

 日本では#1を1日1錠と#3を1日2錠飲み、1日あたり約10,000円もかかります。タイの標準的な飲み方は#1と#2を1日1錠ずつです。費用はAnonymous Clinicを利用した場合、#1は一番安いジェネリック薬品を用いればなんと1錠12.25バーツ(約37円)、#2は1錠6.25バーツ(約19円)(いずれも2018年8月現在)です。合計で1日あたり18.75バーツ(60円未満)、なんと日本の170分の1の値段です。

1日あたり60円なら、日本で感染の機会があったとしても翌日にLCCなどを利用してバンコクに渡航する価値が充分にあるでしょう。ちなみに、タイのLCCノックスクートは10月30日から関空→バンコクを飛ばしますが、セール価格は8,900円です。

タイで日本と同様#1と#3の組み合わせにするのは、感染したかもしれないウイルスが耐性ウイルスである可能性を考えたときです。#3はタイでも高価ですが、それでもAnonymous Clinicでは1錠128バーツ(2018年8月現在)です。これを1日2錠のみますから、1日あたりのPEPは#1の12.25バーツ+#3の128x2(=256バーツ)で合計268.25バーツ(約810円)となります。

 PrEPは日本でもタイでも#1を1日1錠が基本です。日本では一月あたり10万円以上かかりますがタイではわずか1,200円程度です。

 当然のことながら治療を受けるときも日本とは比較にならないくらい安くつきます。薬の組み合わせによっては日本で3割負担の治療を受けるよりもはるかに安くなるというわけです(もっとも、日本では所得にもよりますが厚生医療の適応になりますから本人負担はさほど高くありません)。

 タイではHIVは日本よりもはるかに感染者が多くコモン・ディジーズとなっていますから、基本的に多くの病院/クリニックで治療が受けられます。GINAが調べた範囲ではAnonymous Clinicが最も安い費用で提供しています。

〇ワクチンを接種するとき

 ワクチンは次の2つのいずれかがおそらくタイで最も安いでしょう。ただし双方とも日本語は通じません。タイ語か英語がある程度できなければ受診は困難でしょう。

Thai Travel Clinic
  マヒドン大学の熱帯医学病院の中にあります。ワクチンのプライスリストはウェブサイトで閲覧できます。

・タイ赤十字のImmunization and Travel Clinic 
  先述のAnonymous Clinicと同じ敷地にあります。このクリニックのすぐ隣には「ヘビ園(snake farm)」があり観光名所となっています。ワクチンのプライスリストは公開されておらずクリニック内に掲示されているだけです。

 例えば狂犬病ワクチンは日本では1本15,000円ほどしますが、上記クリニックではいずれも1,100円ほどです。麻疹・風疹混合ワクチンは日本では10,000円以上しますが(さらにすぐに在庫切れになる)、上記クリニックではMMR(麻疹・風疹・おたふく)ワクチンが600円ほどです。

〇チェンマイの医療機関

 クリニックについては情報不足でよくわかりません。基本的にはタイ語か英語ができないと受診は困難です。メサドン療法(麻薬依存症の治療)を実施しているクリニックもあります。

 日本人が受診しやすいのは次の5つの病院です。

Chiangmai Ram Hospital
トータルでみれば一番お勧めです。救急車は無料ですし日本人スタッフが丁寧に対応してくれます。

Rajavej Chiangmai Hospital 
タイで働いている人なら社会保険も使えることがあるそうです(受診前に確認してください)。日本語の通訳がいます。

Lanna Hospital  
Rajavej Chiangmai Hospitalと同様、社会保険が使えることがあるそうです(やはり受診前に確認してください)。日本語の通訳がいます。

Bangkok Hospital Chiang Mai
費用が元も高いと言われています。救急車要請は数万円かかることもあるようです。日本語の通訳がいます。

McCormick Hospital
これら5つの病院で最も費用が安いと言われています。ただし日本語の通訳はいませんから、タイ語か英語での診察となります。

 その他下記の病院があります。いずれも旅行者向けではありません。

Nakornping Hospital 
国立病院です。

Maharaj Nakorn Chiang Mai Hospital
通称Suandok(スワンドーク) Hospital。チェンマイ大学医学部附属病院で国立です。

Chiang Mai Neurological Hospital 
神経疾患の専門病院でチェンマイ市立病院です。

〇最後に

 上記情報はいずれも2018年8月現在のものです。受診前には直接医療機関に問い合わせられることを勧めます。医師と患者には"相性"がありますが、タイの医療機関を受診した人たちの話によると通訳との相性も重要のようです。「あそこの病院は通訳がイヤだから二度と行きたくない」という声も何度も聞きました。個人的には、タイが好きな人やタイに繰り返し渡航する人はタイ語か英語を勉強して通訳なしで受診することを勧めます。

投稿者 医療法人太融寺町谷口医院

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2018/09/25

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