医療ニュース

2018年8月6日 アボット社の「FreeStyleリブレ」は普及するか

 歴史に残る画期的な家庭用医療機器になるだろう...。

 これは、2017年1月、アボット社の「FreeStyleリブレ」(以下「リブレ」)が発売されたときの私の最初の印象でした。なにしろ、針を刺すことなく身体にパッチを貼るだけで血糖値が24時間モニタできるのです。今までのように一日に何度も針を刺して血を出して測定する必要がありません。

 しかも保険適用があると言います。ならば普及するに違いない...、と考えたいところですが、私はそうはならないと思いました。その理由はふたつあります。

 ひとつは、保険適用があるといっても、保険点数が(なぜか)異常に低く設定されており、医師が患者さんに勧めると(まず間違いなく)患者さんは喜ぶでしょうが、医療機関側が赤字になるということです。そしてもうひとつの理由は、保険適用は「インスリンを使っている患者」に限定されていることです。10年前ならある程度普及したかもしれませんが、現在糖尿病でインスリンが必要なケースは激減しています。これはすぐれた内服薬や(インスリンでない)注射薬が登場したからです。

 では自費でもいいから「リブレ」を使いたいという人はいないのか。もちろん大勢の人がそう思うと思います。実際に糖尿病で内服薬を使っている人はもちろん、現在投薬なしで食事療法と運動療法で経過をみている糖尿病(あるいは糖尿病予備軍)の患者さん、あるいは、高血糖を指摘されたことはないけれど自身の血糖値に関心のあるいわば「健康オタク」の人達も関心を持つでしょう。

 問題は費用です。小さな器械を購入する必要がありこれが約8千円、2週間使用できるパッチが1枚約8千円です。ということは最初の月は約24,000円、次の月から毎月約16,000円がかかります。この費用を捻出できる人はそう多くないでしょう。
 
 というわけで、コストが大幅に下がらない限りこの製品が普及することはない、というのが発売時に私が出した結論でした。

 ところが...。私の予想に反して使用している人がじわりじわりと増加してきています。当院の患者さんのなかにも少しずつ増えてきています。私自身は依然「家計が苦しい」と言っている患者さんを多くみていますから好景気という実感はないのですが、生活に余裕のある人が増えてきているのでしょう。

 現在費用が高すぎるといっても、この製品が極めて優れたものであることには変わりありませんから、いずれ価格が下がり広く使われるようになり、針を刺して血糖を測る方法はなくなるでしょう。電子メールが普及してFAXがすたれたように。

 また、現時点では実用化にいたっているとは言えませんが、いずれスマホで血糖値が管理できるようになるでしょう。すでに、いくつかの会社から出ている体重計、血圧計、機能的時計?(なんと呼べばいいのでしょうか。「Apple Watch」や「Fitbit」のことです)を使えば、体重、血圧、24時間の心拍数、睡眠の程度、運動量(消費カロリー)などが記録できます。

 「スマホで健康管理」は確実に進化し続けています。

メディカルエッセイ第150回(2015年7月)「スマホで健康管理」