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2020年9月27日 9種の降圧薬に抗うつ効果

 信じられないほど"希望"のある研究を紹介しましょう。「9つの降圧薬に抗うつ効果がある」とする研究です。

 医学誌「Hypertension」2020年8月24日号に掲載された論文「降圧薬とうつ病のリスク(Antihypertensive Drugs and Risk of Depression)」によると、デンマークの調査でいくつかの降圧薬には抗うつ効果があることが分かりました。

 研究はデンマークのデータベースを使用して、使用頻度の高い41の降圧薬がうつ病の発症リスクに関連しているかどうかが調べられています。その結果、下記の9種類に抗うつ効果があることが分かりました。

〇ACE阻害薬:エナラプリル、ラミプリル(日本未発売)
〇カルシウム拮抗薬:アムロジピン、ベラパミル、ベラパミル合剤
〇βブロッカー:プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール

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 降圧薬を分類すると、上記3つ以外に、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、利尿薬、αブロッカーの3種があります。このうち、利尿薬については論文では「検討したがうつ病を改善させることも悪化させることもなかった」とされています。一方、ARBとαブロッカーについては記載がありません。αブロッカーはめまいや立ち眩みなどの副作用が多いことから日本ではあまり使われないのですが、おそらくデンマークでも同じでしょう。ARBについては日本ではかなり処方されていますが、デンマークでは普及していないのかもしれません。

 興味深いのは、ACE阻害薬、カルシウム拮抗薬、βブロッカーのすべてに抗うつ効果があるわけではないことです。もちろん、患者さんの精神状態は個別に検討すべきではありますが、高齢とともに抑うつ感を自覚する人が増えるのは事実です。ならば、例えばカルシウム拮抗薬の処方を検討するなら、アムロジピンかベラパミルを優先すべきかもしれません。