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2021年7月19日 血圧の薬カルシウム拮抗薬は男性の「夜間頻尿」に注意

 血圧が高い......
 夜中にトイレに起きる......

 これらは共に中年以降の男性によくある訴えです。血圧については程度やその人の背景(例えば肥満や喫煙があれば基準が厳しくなる)にもよりますが、運動や食事療法で改善しない場合は薬を検討することになります。

 その血圧の薬のせいで夜中のトイレの回数が増えるようなことは避けたいものです。

 しかし、血圧の薬によってはそうなりやすいのはどうやら間違いなさそうです。

 医学誌「Journal of Clinical Medicine」2021年4月9日号に興味深い論文が掲載されました。タイトルは「カルシウムブ拮抗薬は40歳以上の男性の夜間頻尿に関連 (Calcium Channel Blockers Are Associated with Nocturia in Men Aged 40 Years or Older )」です。

 研究の対象者は泌尿器科に入院していた40歳以上の男性合計418人です。夜間の排尿回数は次のようになりました。

・降圧薬を飲んでいない人:1.35回
・カルシウム拮抗薬以外の降圧薬を飲んでいる人:1.48回
 (飲んでいない人との有意差はなし)
・カルシウム拮抗薬だけを飲んでいる人:1.77回
・カルシウム拮抗薬を含む降圧薬を2種以上飲んでいる人:1.90回

 カルシウム拮抗薬だけが夜間頻尿を促すというわけです。そして、この研究にはもうひとつ興味深い結果が導かれています。この傾向は若年者(40~65歳)で顕著だというのです。この年代では、カルシウム拮抗薬を飲んでいない男性の夜間の排尿は0.96回なのに対し、飲んでいる男性では2.00回に上昇しているのです。

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 降圧薬を簡単にまとめてみましょう。次の種類があります。

#1 カルシウム拮抗薬
#2 ARB(アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
#3 ACE阻害薬
#4 βブロッカー

 他にはαブロッカー、サイアザイド系利尿薬、漢方薬などがあります。#1から#4では、太融寺町谷口医院の処方量で言えば、(ARB>>カルシウム拮抗薬≒βブロッカー>>その他)です。ACE阻害薬は、ARBと似た薬ですが副作用がそれなりの頻度で出現するため、ARBの後発品が登場してからはほとんど使わなくなりました。

 カルシウム拮抗薬は昔からある薬で後発品も豊富にそろっていますから、谷口医院を開院したころには最も多く処方していたのですが、年々頻度が減ってきています。実は、夜間頻尿は以前から(この論文の登場前から)訴える人はそれなりにいましたし、顔がほてる、むくむ、という訴えもそれなりにあり、さらに他の薬と飲み合わせが複雑であることから次第に処方頻度は減っていきました。ただし、血圧を下げる力は最も強いように思えます。

 血圧の薬を飲んでいる男性は、最近気になる夜間のトイレは年齢のせいではない可能性があります。特に若い人は一度薬の見直しをしてもいいかもしれません。