医療ニュース

2023年3月13日 日焼け止めを使ってはいけない7つの地域

 コロナはすでに終った、と考える人が増え、海外旅行に行く人が急激に増加しています。過去1ヶ月の谷口医院の状況を紹介しておくと、ビジネス、観光、留学を除く目的で、つまり単なるレジャーで海外旅行に行く人の行先で多いのが米国とタイです。そして、この2国に共通する大変重要な注意事項があります。それは「サンスクリーン(日焼け止め)を使えない」です。

 解説しましょう。過去の医療ニュース「日焼け止めが禁止されてもサプリメントはNG」で紹介したように、ハワイでは紫外線吸収剤を含むサンスクリーンの使用が全面的に禁じられました。この話を患者さんにすると、「私のは大丈夫です」とよく言われるのですが、調べてみると紫外線吸収剤が入っているサンスクリーンだった、ということがよくあります。

 「私が使っているのは敏感肌用だから問題ないだろう」と考えてしまうのでしょう。しかし薬局や化粧品屋などで販売されているサンスクリーンの多くには紫外線吸収剤が含まれています。「敏感肌用」「低刺激」などと謳っているものにも含まれていることはよくあります。

 医療機関では大昔から、敏感肌の人には「紫外線吸収剤が含まれていない(つまり、紫外線散乱剤だけでつくられた)サンスクリーンを使いましょう」と言い続けています。

 その理由は「皮膚を守るため」です。紫外線吸収剤は伸びがよく、色合いもきれいで塗りやすいのですが、敏感肌にはトラブルになることがあるのです。敏感肌でない人にとっては使いやすいわけですから紫外線吸収剤入りのサンスクリーンを使いたくなります。実際、2020年まではそれでOKでした。

 ですが、2021年1月1日から事情は変わりました。まずはハワイ(オアフだけとの情報もあります)で紫外線吸収剤を含むサンスクリーンの使用が禁止され、もしも使って見つかれば罰金はなんと千ドル。その人にもよるでしょうが、ハワイ滞在中の遊行費がすべて消え去るほどの額でしょう。

 日本で当たり前のように使用しているサンスクリーンが使えないというこのルールに驚いた人も少なくないと思いますが、もっと驚かされるのがタイです。

 タイでは2021年の8月からoxybenzone、octinoxate、4-methylbenzylidene camphor、butylparabenの4つの成分(日本製の多くのサンスクリーンに含まれています)のいずれかを含むサンスクリーンの使用が禁止され、罰金はなんと10万バーツ(約35万円)! ハワイより高いのです。タイでは物価が上昇し、円が下がったといっても、LCCを使えば4万円以下で往復できますし、宿泊は1泊3千円も出せばホットシャワー付きのゲストハウスに泊まれます。そのタイで罰金10万バーツには驚きます。

 尚、メディアの報道によると、タイより先にサンスクリーンを禁止していた地域として、ハワイ以外にパラオとボネールがあります。サンスクリーン関連のサイトによれば、2021年11月現在でサンスクリーンが禁止されているのは、ハワイ、タイ、パラオ、ボネール島、ヴァージン諸島、キーウェスト(フロリダ)、メキシコのエコツーリズム保護区(Ecotourism reserves in Mexico)の7つです。

 これからはこの7つの地域だけでなく、世界のどこに行っても「サンスクリーンは紫外線散乱剤のみ」が常識になるかもしれません。

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 このニュースをまとめているときに初めて知ったのですが、タイのピピ島のマヤビーチ(英語では「Maya Bay」が一般的な表現)が2018年から2022年まで閉鎖されていたそうです。2022年の再開後も、再び閉鎖、その後再びオープン、といった経緯があったようです。

 マヤビーチは映画「ザ・ビーチ」のロケで使われたことで有名で世界中から多数の観光客が集まります。その際、サンスクリーンが使用されすぎてサンゴ礁が破壊されたそうです。

 ちなみに、ピピ島(英語表記はPhi Phi Island)はプーケットからフェリーで行けますが、個人的にはプーケット県よりもクラビ県に滞在することを勧めます。クラビの方が観光業界が進出しきっていなくて自然とタイの文化が楽しめるからです。物価もプーケットよりも安いです。