医療ニュース
2023年9月3日 うつ病があれば炎症性腸疾患を発症しやすい
炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Diseases)とは、分かりやすく言えば、「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」のことです。双方ともいわゆる自己免疫性疾患のひとつで、いったん発症するとかなり長期の治療が必要となります。
双方とも、腹痛、下痢、血便、微熱、倦怠感などが続き、生活に支障がでます。がんのリスクにもなり、若くして大腸、さらには肝臓の手術が必要になることもあります。日本を含む先進国で過去数十年増加傾向にある疾患です。
さて、今回発表されたのが「うつ病を患っていれば、将来炎症性腸疾患を発症するリスクが上昇する」という研究です。
医学誌「Inflammatory Bowel Diseases」オンライン版2023年6月10日号に掲載された論文「うつ病と炎症性腸疾患との関連:体系的レビューとメタアナリシス(Association of Depression With Incident Inflammatory Bowel Diseases: A Systematic Review and Meta-Analysis)」を紹介します。
研究の対象はこれまでに発表されているうつ病と炎症性腸疾患の関連について調べた研究5,307件です。これらから基準に合致するものを選び出して解析しなおしました。結果、次のようなことが分かりました。
・うつ病があればクローン病を発症するリスクが1.17倍に上昇する
・うつ病があれば潰瘍性大腸炎を発症するリスクが1.21倍に上昇する
・うつ病を発症した数年後に炎症性腸疾患を発症しやすい
************
研究の対象が過去に発表された5,307件というこの数字がかなり大きいことに驚かされます。これは、炎症性腸疾患の患者さんがうつ病も患っているケースが少なくないと気付いた医師がかなり多いことを示しています。
「どうやら炎症性腸疾患はうつ病と関連がありそうだ。ではどれくらい関連性があるのだろう」と考えた研究者が少なくないということです。
ただし、この考えには昔から論争がありました。「そのような慢性疾患に罹患して平静を保てるはずがない。次第によくうつ状態が出現してもおかしくない」、「いや、そうではなくて炎症性腸疾患を発症したのが後だ。だから関係はない」、などです。
また、これらの疾患を持っている人は性格が似ている、という医療者もいます。さらに、炎症性腸疾患だけでなく、関節リウマチや橋本病など他の自己免疫疾患にも性格の特徴があると言う人もいます。
私個人としては先入観を持ちたくないという理由もあって、日頃の臨床ではこういうことを考えないようにしていますが、これらの疾患を持っている人の精神状態には注意を払うようにしています。
その結果、炎症性腸疾患の治療は(生物学的製剤など高価な薬が必要になるため)専門医を受診してもらい、その他の症状や疾患は谷口医院で診ている、というケースが非常にたくさんあります。そして、それら「症状や疾患」のなかにはうつ病も含まれていることが少なくありません。
双方とも、腹痛、下痢、血便、微熱、倦怠感などが続き、生活に支障がでます。がんのリスクにもなり、若くして大腸、さらには肝臓の手術が必要になることもあります。日本を含む先進国で過去数十年増加傾向にある疾患です。
さて、今回発表されたのが「うつ病を患っていれば、将来炎症性腸疾患を発症するリスクが上昇する」という研究です。
医学誌「Inflammatory Bowel Diseases」オンライン版2023年6月10日号に掲載された論文「うつ病と炎症性腸疾患との関連:体系的レビューとメタアナリシス(Association of Depression With Incident Inflammatory Bowel Diseases: A Systematic Review and Meta-Analysis)」を紹介します。
研究の対象はこれまでに発表されているうつ病と炎症性腸疾患の関連について調べた研究5,307件です。これらから基準に合致するものを選び出して解析しなおしました。結果、次のようなことが分かりました。
・うつ病があればクローン病を発症するリスクが1.17倍に上昇する
・うつ病があれば潰瘍性大腸炎を発症するリスクが1.21倍に上昇する
・うつ病を発症した数年後に炎症性腸疾患を発症しやすい
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研究の対象が過去に発表された5,307件というこの数字がかなり大きいことに驚かされます。これは、炎症性腸疾患の患者さんがうつ病も患っているケースが少なくないと気付いた医師がかなり多いことを示しています。
「どうやら炎症性腸疾患はうつ病と関連がありそうだ。ではどれくらい関連性があるのだろう」と考えた研究者が少なくないということです。
ただし、この考えには昔から論争がありました。「そのような慢性疾患に罹患して平静を保てるはずがない。次第によくうつ状態が出現してもおかしくない」、「いや、そうではなくて炎症性腸疾患を発症したのが後だ。だから関係はない」、などです。
また、これらの疾患を持っている人は性格が似ている、という医療者もいます。さらに、炎症性腸疾患だけでなく、関節リウマチや橋本病など他の自己免疫疾患にも性格の特徴があると言う人もいます。
私個人としては先入観を持ちたくないという理由もあって、日頃の臨床ではこういうことを考えないようにしていますが、これらの疾患を持っている人の精神状態には注意を払うようにしています。
その結果、炎症性腸疾患の治療は(生物学的製剤など高価な薬が必要になるため)専門医を受診してもらい、その他の症状や疾患は谷口医院で診ている、というケースが非常にたくさんあります。そして、それら「症状や疾患」のなかにはうつ病も含まれていることが少なくありません。