医療ニュース

2013年2月8日(金) 風疹の抗体、本当にありますか?

 現在世間ではインフルエンザが猛威をふるっていますが、感染力の強い感染症で忘れてはいけないのが風疹です。風疹についてはこのサイトで何度かお伝えしていますが、現在も増え続けています。それも成人の間で確実に増えています。
 
 国立感染症研究所感染症情報センターの報告によりますと、2012年の風疹報告数は、2,353例(暫定値)で、これは過去5年間で最も多い報告数となります。さらに特筆すべきなのは、先天性風疹症候群の報告数が5例あることです。
 
 現在厚生労働省が予防接種を呼びかけているのは次の3つのいずれかに該当する人です。

① 妊婦(抗体陰性又は低抗体価の者に限る)の夫、子ども及びその他の同居家族
② 10代後半から40代の女性(特に、妊娠希望者又は妊娠する可能性の高い者)
③ 産褥早期の女性

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 風疹は飛沫感染で簡単に他人に感染します。ですから、あなたが風疹にかかっていることを知らずに、人ごみでくしゃみをすると横に妊婦さんがいた、ということもありうるわけです。
 
 風疹がむつかしいのは、特に成人の場合、典型例をとらない場合が少なくないからです。太融寺町谷口医院でも、高熱と強い倦怠感、全身の皮疹などがでて、「風疹にしては症状が強すぎる」という場合もあれば、その逆に、熱はほとんどなくリンパ節もほとんど腫脹しておらず皮疹が少し気になるという程度で一見単なる湿疹かと見間違える「風疹にしては症状が弱すぎる」ものもあり、私自身も直ちには診断がつけられなかったケースもありました。
 
 風疹に絶対にかかってはいけないのは妊婦さんです。生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群に罹患することを避けなければならないからです。苦労の末に念願の妊娠が実現したのにその直後に風疹にかかって泣く泣く堕胎せざるを得なくなった...、という女性も実際にいます。
 
 風疹はワクチンを接種しているか一度かかっていて抗体が形成されていれば心配する必要はないのですが、患者さんの「風疹の抗体はあるはずです」というのは誤解であることが少なくありません。(詳しくは下記コラムを参照ください) 上記の厚労省が呼びかけている3つに該当しない人でもワクチン接種(もしくは抗体検査)を検討すべきでしょう。
 
(谷口恭)

参考:
はやりの病気第109回(2012年9月) 「これからの風疹対策」
医療ニュース2012年6月1日 「風疹が過去最多の勢い」