医療ニュース

2012年6月1日(金) 風疹が過去最多の勢い

 風疹(ふうしん)が流行っています。

 国立感染症研究所感染症情報センターの報告によりますと、2012年1月から5月20日までに感染が届けられた患者数は205人(速報値)で、これは全数報告が始まった2008年以降の同時期で過去最多となります。昨年(2011年)の同時期は126人でしたから、昨年からみると1.6倍の増加となります。
 
 2011年を1年間でみると患者数は369人で、これは2008年以降で最多となりますが、2010年の89人からみると約4倍となっています。そして、今年(2012年)は2011年を上回る勢いで推移しているということになります。
 
患者数を都道府県別でみてみると、最多は兵庫県の62人で、大阪府46人、東京都28人、京都府12人、と続きます。

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 風疹は、飛沫感染(他人のくしゃみなどで感染します)で、2~3週間の潜伏期間を経て、発疹、発熱、リンパ節の腫れなどの症状が出現します。子どもに感染した場合は比較的軽症ですみますが、それでも脳炎など重篤な合併症を起こすこともあります。
 
 また、風疹で最も問題になるのが、妊娠初期の女性がかかった場合で、こうなると先天性風疹症候群といって、胎児が難聴、心疾患、白内障などの障害を持って生まれることがあります。このため中絶せざるを得ない妊婦さんもいます。
 
 太融寺町谷口医院でも、昨年は2~3ヶ月にひとりくらいの割合で風疹の患者さんがこられました。成人の場合、高熱が続きリンパ節の腫れがなかなか引かないこともあります。
 
 風疹は予防接種(ワクチン)をしていればほぼ完全に防ぐことができるのですが、していない人があまりにも多い、というのが我々医療者の印象です。実際、2004年に国立感染症研究所が発表したデータによりますと、20~30歳代の風疹に対する免疫をもたない人(ワクチンをうっていなくて過去にかかったこともない人)は530万人にも上るそうで、また、私の印象を述べれば(患者さんには失礼ですが)、過去にかかったことがあると思いこんでいて実際にはかかっていなくて成人してから感染した、という人も少なくありません。
 
 風疹ワクチンも他のワクチンと同様、誤解の多いワクチンで、副作用を極端に恐れている人が少なくありません。たしかにワクチンに伴う副作用はゼロではありませんが、副作用のリスクと接種せずに罹患してしまったときのリスクをしっかりと比較検討すべきです。
 
 風疹ワクチンは麻疹(はしか)ワクチンとセットになったMRワクチンというものが定期接種に分類されています。つまり無料で接種できるということです。現在は1歳代で1回(1期)、小学校入学の前年に1回(2期)の合計2回の接種が基本です。また、特例措置として、2008年から5年間(2012年まで)は、中1と高3に相当する年齢でうつことができます。(注)
 
 定期接種の年齢に該当しない人は自費となりますが、これだけ流行してきましたからよほどの理由がない限りは全員が接種すべきと思われます。(特にこれから妊娠を考えている人) まずはかかりつけ医に相談するようにしましょう。
 
(谷口恭)

注:MRワクチンの「定期接種」は現在太融寺町谷口医院では実施していません。お近くの小児科クリニックにお問い合わせください。成人の風疹ワクチン接種はおこなっていますが、通常はまず抗体の有無を調べますから初診時に接種とはなりません。詳しくは受診時にあるいはお電話にてお問い合わせください。また下記「予防接種」もご参照ください。
 
参考:
トップページ「予防接種」
医療ニュース2007年3月6日「はしか・風しん混合ワクチンの2回目接種率わずか30%」