医療ニュース

2008年7月24日(木) デング熱は蚊を駆除すると重症者が増加!?

 東南アジアや中南米に旅行に行くときに予防しなければならない病気に「デング熱」があります。ただ、デング熱自体は別段珍しいわけではなく、例えばタイでも数週間滞在していると「○○がデング熱で倒れた」などという話はよく聞きますし、数日から長くても数週間程度で治癒します。

 しかし、「デング出血熱」を発症するとそうはいきません。もしもデング出血熱を発症すると必ず入院しなければなりませんし、命を落とすことも珍しいことではありません。

 デング熱もデング出血熱も、ネッタイシマカ(あるいはヒトスジシマカ)と呼ばれる蚊がウイルスを媒介することによってヒトに感染させます。

 ならば、蚊を駆除すれば予防できるではないか・・・

 誰もがそう考えるでしょう。しかし、実際は一筋縄ではいかないようです。

 デング熱の流行地域で蚊を中途半端に駆除すると、駆除しない場合に比べて、デング出血熱の発症が増加する・・・

 大阪大学とタイの国際チームがこのような研究結果を米国の科学誌に発表しました。(報道は7月16日の共同通信)

 研究チームは2002年から2004年にタイの100万世帯を調査しています。その結果、「貯水槽などに蚊の幼虫がいる世帯の割合が地域内で増えるにつれて出血熱の発症が増える。しかしその割合が30%を超えると少なくなる」との結論がでています。

 この原因について、「絶えず蚊に刺されていると免疫が高い状態で維持されるが、刺される間隔が空くと危険なタイプの再感染が起きやすくなる」と考えられています。

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 この研究は対象がタイ人であることに注意を払わねばなりません。以前、デング熱についてタイ人の医師に聞いてみたことがあるのですが、彼によると、「タイ人の多くは子供のときにデング熱に罹患していることが多い」そうです。

 この研究結果をそのまま応用すると、「貯水槽に蚊の幼虫がいる割合が30%のところが最も出血熱のリスクが高いけれどもそれを超えると(つまり蚊がたくさんいるところは)逆に安全」、ということになりますが、それはタイ人の場合であって、日本人からみたときには、できる限り蚊の予防をすることが大切です。

(谷口恭)

参考:

2008年4月3日(木)「ブラジルでデング熱と黄熱が大流行」
2008年2月19日(火)「タイでデング熱が急増」