医療ニュース

2009年12月2日(水) タイで狂犬病が急増

 今年になりタイで狂犬病が急激に増えているようです。

 2009年11月26日のBangkok Postによりますと、今年は現時点ですでに23人が死亡しています。2008年は1年間の死亡者は9人ですから大きく増加していることになります。バンコクだけでみてみると、昨年の死亡者が1人なのに対して今年はすでに7人が死亡しています。

 タイでは、20年ほど前までは、年間に数百人が狂犬病で死亡していましたが、その後ワクチンなどの対策が強化され、近年の死亡者は大きく減少していました。

 この事態に対し、チュラロンコン大学医学部のティラワット・ヘマユタ(Teerawat Hemajuta)医師は、「死亡例の半数は飼い犬から感染している。犬の予防接種が何よりも大切。特に子犬には注意が必要である」とコメントしています。

 ティラワット医師は、「専門家の中には生後3ヶ月まではワクチンを接種すべきでないと考えている者もいることが問題でこれは訂正されなければならない」、と警告しています。

 さらに、ティラワット医師は、犬のバースコントロール(避妊)をしっかりとおこなわなければならないことを指摘しています。現在タイの犬は飼い犬と野良犬を合わせると2百万匹いると言われていますが、適切なバースコントロールの対策が取られなければ20年後には17百万匹にもなると言われています。(タイの人口は約6千万人ですから犬の数が人の約3倍ということになってしまいます)

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 現在WHO(世界保健機関)は、狂犬病を鳥インフルエンザに次ぐ動物からヒトに感染する感染症で2番目に恐ろしい疾患と位置づけています。

 タイに行くと昼間から道端に寝そべっている犬をたくさん見ますから、タイの犬は平和的で可愛らしい動物に思えますが、夜になると豹変することがあります。今年はすでに23人が狂犬病で死亡しているわけですから、夜間の外出に注意すべきかと思われます。

(谷口恭)

参考:はやりの病気第40回(2006年12月)「狂犬病」