医療ニュース

2009年6月29日(月) HTLV-1が大都市で増加

 HTLV-1(成人T細胞白血病ウイルス)の調査を厚生労働省の研究班が約20年ぶりに実施し、その結果、大都市圏での感染者が増加していることが分かりました。(同省の発表は6月27日、報道は翌日の日経新聞など)

 まず、HTLV-1の国内の感染者はおよそ108万人で、厚生省(当時)の1988年から1990年の調査時の120万人と比べ、大きな差はありません。

 特筆すべきなのは感染者の居住地域です。以前は九州や四国の山岳地方に圧倒的に多く、そのため一部の医療者はこの感染症を「風土病」とみなしていたほどです。

 感染者の地域別割合をみていくと、九州が前回調査の50.9%から41.4%に減少しています。一方、関東は17.3%(前回10.8%)、中部8.2%(前回4.8%)、近畿20.3%(前回17.0%)と大都市圏での増加が目立ちます。

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 HTLV-1は、HIVと同じように逆転写酵素を持つRNA型のウイルスです。HIVがこれだけ有名なのに、なぜHTLV-1が世間ではそれほど注目されていないのか、私はこのことが不思議でなりません。

 HTLV-1は、感染経路としては母子感染が最多で、特に母乳からの感染が多いと言われています。しかしながら、血液感染や性感染でも感染しうるものであり、HIVと同じタイプのウイルスであり、発見はHIVよりも早く、感染者がHIVとは桁違いに多いわけですから(HIVの国内罹患者は15,000人程度、HTLV-1は100万人以上)、HIVと同じかそれ以上に注目されるべきではないでしょうか。

参考:
はやりの病気第47回(2007年7月)「誤解だらけのHTLV-1感染症(前編)」
はやりの病気第48回(2007年8月)「誤解だらけのHTLV-1感染症(後編)」

(谷口恭)