医療ニュース

2010年11月4日(木) 腹囲は糖尿病のリスクか?

 メタボリックシンドロームの診断基準から腹囲を外すべきでないないか、という議論があるということは何度かお伝えしてきました。(下記医療ニュース参照) 腹囲でなく体重にこそ注目すべきという意見があり、また、やせていても中性脂肪や血糖が高い人が少なくない、ということもよく言われます。

 アメリカのメタボの診断基準には腹囲が入っていないこともあり、全体的な流れとしては、日本の診断基準も腹囲を外すべきでないか・・・、という声が大きくなってきているように思われます。

 ところが、これに反対するような研究結果が報告されました。医学誌『Journal of Epidemiology and Community Health』2010年10月1日号に掲載された論文(注)によりますと、英国に比べて米国で糖尿病罹患率が高いのは、肥満など従来から指摘されている因子ではなく、ウエストラインが原因であるというのです。

 この研究によりますと、糖尿病は英国よりも米国で罹患率が高いことの原因として、年齢、喫煙、社会経済的地位、体重(BMI)などの従来の危険因子では説明できない、としています。

 そして、米国男性のウエストサイズは英国男性より1.2インチ(約3cm)大きく、米国女性のウエストサイズは英国女性より2インチ(約5cm)大きいそうです。

 これらを分析した結果、男女とも米国人は英国人よりもウエストラインが大きいことが原因で糖尿病に罹患しやすい、とされています。(女性はその傾向が特に顕著とされています)

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 便宜上、「腹囲」と「ウエストライン」を同じ扱いとしましたが、厳密に言えばこの2つは少し異なります。「腹囲」はおなかの一番出っ張ったところで、ウエストラインはお臍のあるところです。しかし、痩せている人はおなかがでっぱっておらず逆に最もくびれているところになることもありますから、現実的にはあまり区別する意味がないと言えるでしょう。

 腹囲か体重か、という議論は、たいして意味がないように思えてなりません。健康な人というのは体重過多にならないですし、おなかも出ないからです。こう言ってしまえば身も蓋もありませんが、日頃から太らないようにしておなかがでないようにして、定期的に健診を受けていれば問題ないわけです。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「What explains the American disadvantage in health compared with the English? the case of diabetes」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://jech.bmj.com/content/early/2010/10/01/jech.2010.108415.abstract?sid=244849d3-f224-4e57-befd-deb73be7d3c8

参考:医療ニュース2010年7月24日「メタボは腹囲よりも体重を重視すべし」