医療ニュース

2010年7月24日(土) メタボは腹囲よりも体重を重視すべし

 現在、メタボリック・シンドローム(以下メタボ)の診断基準は、日本では腹囲が必須になっています。つまり腹囲が正常であれば、血圧や血糖値に異常があってもメタボの診断がつかないのです。一方、アメリカの診断基準では腹囲は診断基準の1つにすぎず、腹囲が正常でも、メタボと診断されることがあります。また、腹囲を診断基準に加えること自体がナンセンスで、やせていても血圧や血糖に異常があれば動脈硬化をおこしやすいとする研究もあります。つまり、専門家の間でもメタボの診断基準について統一見解が得られていないのが現状というわけです。

 「日本人男性では、腹囲に関係なく体重が増えれば血圧や血糖が悪化する傾向が強い・・・」

 これは、新潟県長岡市の立川メディカルセンターの調査結果で、医学誌『Diabetes Care』2010年7月号に論文が掲載されています。(下記注参照。また、この調査については7月20日の毎日新聞でも紹介されています)

 この調査では、2008年~2009年に同センターの人間ドックを受診した風邪などをひいていない男性1,271人(平均51.6歳)を対象としています。メタボの診断基準である、血圧、血糖値、中性脂肪、HDLコレステロール(善玉コレステロール)と、体重変化との関係を、腹囲の異常があるグループとないグループにわけて分析しています。

 その結果、血圧と血糖値については、腹囲の異常に関係なく、体重が増加すれば悪化しているということが判ったようです。

 尚、HDLコレステロールは、腹囲の異常がないグループで体重増加によって悪化していることがわかり、中性脂肪は、腹部肥満があるグループで体重増加との関係がみつかったそうです。

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 冒頭で述べたように、現在メタボの診断基準は専門家の間でも意見が分かれているのですが、最近発表されている研究では、腹囲に関しては少なくとも必須条件からは外すべきではないか、とするものが増えています。

 (専門家ではない)一般の人は、診断基準がどう変更されるかに注目するよりも、体重を増やさず、規則正しい生活をするということを心がけていればいいのではないかと私は考えています。(適正体重がどれくらいか、という点についても議論がありますが・・・)

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Weight Reduction May Be Beneficial for Japanese Men
With Cardiometabolic Risk Factors Even if They Are Not
Abdominally Obese」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://care.diabetesjournals.org/content/33/7/e95.full?sid=3bca8ea8-b5a0-4d0f-b221-309e9f27b1a4

参考:医療ニュース
2010年4月12日 「やせていてもメタボには注意を」
2010年2月11日 「メタボ腹囲を巡って報道に違いが・・・」
2009年5月1日 「高血圧はメタボより危険!」
2009年3月10日 「メタボ腹の基準をめぐって」