医療ニュース

2012年2月6日(月) 年収低いほど肥満、野菜不足、運動不足

 厚生労働省から発表された「国民健康・栄養調査」で、年収が低いほど喫煙率が高い、という結果がでたということを先日お伝えしましたが、他の健康に関する項目についても年収との相関関係が示されています(注)。
 
 この調査では、年収に応じて対象者が3つのグループに分けられています。年収200万円未満、200万円から600万円未満、600万円以上の3つです。ここでは便宜上それぞれのグループを「低」「中」「高」と呼ぶことにします。
 
 肥満については、「低」の女性で肥満の割合が25.6%、「中」21.0%、「高」13.2%と、年収が高くなるにつれて肥満の割合が減少しています。年収「低」の4人に1人以上が肥満ということになります。
 
 一方、男性では、「低」「中」「高」でそれぞれ31.5%、30.2%、30.7%と、どの年収でもだいたい3人に1人が肥満ということになります。

 朝食を抜いているのは、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ20.7%、18.6%、15.1%、女性では順に17.6%、11.7%、10.5%と、男女とも年収が低いほど朝食を食べない比率が高くなっています。
 
 野菜の摂取量は、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ256グラム、276グラム、293グラム、女性では順に270グラム、278グラム、305グラムと、男女とも年収が低いほど野菜を食べていないということになります。
 
 運動する習慣のないのは、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ70.6%、63.7%、62.5%、女性では72.9%、72.1%、67.7%と、男女とも年収が低いほど運動をしていないということになります。
 
 喫煙者は、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ37.3%、33.6%、27.0%、女性では11.7%、8.8%、6.4%と、男女とも年収が低いほど喫煙者が多いということになります。
 
 ここまでは、(肥満と男性の年収の関係を除けば)年収が低いほど身体によくない習慣がある、と一応は言うことができるかと思います。

 今回の調査では、年収と飲酒、年収と睡眠の質との関係も調べられています。

 飲酒する習慣のあるのは、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ32.6%、36.6%、40.0%と、年収が高いほど飲酒習慣がある、ということになります。(これは、年収が低いとお酒を飲むお金がない、ということなのでしょうか・・・) 女性では7.2%、6.4%、8.0%と特に年収と飲酒との関係はありません。
 
 睡眠の質が悪い者の割合は、男性では「低」「中」「高」でそれぞれ11.1%、11.8%、10.8%と一定の傾向はありませんが、女性では15.9%、15.4%、11.4%と、年収が低いほど睡眠の質が悪い、ということになります。
 
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 これらの結果をみると、年収と健康の間には相関関係があり、「年収が低い人は特に健康に気をつけてくださいね」ということになるでしょう。

 しかし、そんなことを言ってみたところで何の解決にもならないのではないでしょうか。私はこのデータをみたときに最も驚いたのが、最も低いグループが「年収200万未満」とされていることです。厚労省のデータからは、年収「低」「中」「高」がそれぞれ何人かは分からないのですが、「年収200万未満」が3つのうちの1つのグループになっているくらいですから、対象者のおよそ3分の1は年収200万円未満であることが予想されます。
 
 年収が200万未満しかないときに健康に注意することがどれだけできるでしょうか。年収200万円未満の人たちに「健康に気をつけてね~」と言ったところで、おそらく聞く耳を持ってくれないでしょう。彼(女)らは、将来の健康どころではなく貧困という差し迫った現実で精一杯なのではないでしょうか。
 
 年収によって健康状態が決定され、さらに寿命も予想される・・・。そのような時代がすでに到来してしまっているのかもしれません。

(谷口恭)

注:詳しくは厚生労働省の下記のURLを参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000020qbb-att/2r98520000021c30.pdf

参考:医療ニュース
2012年2月3日 「年収低いほど喫煙率が高値」