医療ニュース

2012年3月2日(金) 減らない「いきなりエイズ」

 エイズを発症して初めてHIV感染に気付く、いわゆる「いきなりエイズ」が増えているということは過去に何度かお伝えしていますが、2月24日の厚労省の発表によりますと、2011年の1年間(正確に言えば2010年12月27日から2011年12月25日の約1年間)のいきなりエイズの報告は467件であり、過去最高を記録した2010年の469件と同水準となります。(尚、この467件というのは「速報値」であり、最終的にはさらに増えて過去最多を更新する可能性もあります)
 
 いきなりエイズではない新規にHIV感染が発覚した症例については、1,019件とされており、これは前年の2010年から56件の減少となります。新規HIV感染発覚が最も多かったのは2008年で、このときは1,126件を記録しています。
 
 2011年の1年間に保健所などで行ったHIV抗体検査の件数は131,243件で、前年の2010年から313件増えてはいますが、最多であった2008年からは45,913件減っていることになります。相談件数は163,006件で、前年から1,258件の減少となります。
 
 いきなりエイズの感染経路をみてみると、同性間の性的接触が54%(250件)、異性間の性的接触が28%(131件)となっています。一方、(エイズを発症していない)HIV感染が発覚した例では、同性間の性的接触が67%(685件)、異性間の性的接触が20%(208件)とされています。母子感染も1例報告されています。
 
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 いきなりエイズが過去最高水準で、新規のHIV感染は減っているということは、感染者全体が減っているということを意味するのではなく、つまるところ、HIVへの関心が薄れ、検査をせずに、エイズを発症するまで、まさか自分がHIVに感染するなんて考えてもみなかった・・・、というケースが増えているということです。
 
 太融寺町谷口医院でもHIV感染が発覚した症例は2008年をピークにやや減少傾向にはありますが、発熱、下痢、倦怠感、皮疹などから、エイズはまだ発症していないものの、そういった症状からHIV感染が発覚したという症例(私はこれを「いきなりHIV」と呼んでいます)が2009年あたりから増えています。(詳しくは下記コラムを参照ください)
 
 いきなりエイズとエイズを発症していないHIVの感染ルートを比較すると、いきなりエイズの方が異性間での感染が高い傾向にあります。これは、HIVに無関心で検査に行っていないのは異性愛者に多い、ということを意味します。
 
 特に異性愛者の方で、危険な性交渉や血液感染の可能性のある行為(特に海外でのタトゥーやボディピアス)のある人は、無症状であったとしても検査をしておくべきでしょう。
 
(谷口恭)

参考:
NPO法人GINA GINAと共に第64回(2011年10月) 「増加する「いきなりHIV」

医療ニュース
2011年9月29日 「四半期で新規エイズ発症者が過去最多」
2011年5月27日 「エイズ発症者が過去最多に」