医療ニュース

2012年8月6日(月) ポリオワクチンに伴う混乱

 すでにマスコミで報道されているように、今年(2012年)9月1日より、定期の予防接種に不活化ポリオワクチンが導入されることになりました。さらに、4種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオワクチン)が7月27日に薬事承認されました。4種混合ワクチンは2種類のものが登場するようです。ひとつは「テトラビック皮下注シリンジ」(阪大微生物病研究会)、もうひとつは「クアトロバック皮下注シリンジ」(化学及血清療法研究所)です。

 不活化ポリオワクチンが定期接種に組み入れられたのはもちろん歓迎すべきことなのですが、すでに混乱が生じているようです。話がややこしいのは

・単独の不活化ワクチンと、2種類の4種混合ワクチンが登場することになり、それぞれ接種開始日が異なる

・すでに、生ワクチンを1度接種している場合はどうすればいいのか

・生ワクチンでなく、特殊なクリニックで輸入物の不活化ワクチンを1回、もしくは2回接種している場合はどうすればいいのか

・ポリオ接種は見合わせており、3種混合ワクチンの1回目をすでに接種している場合は?

といった問題がでてくるからです。これらに対し厚労省は、様々な状況でどのようにすべきかの指針を公表しています(注1)。

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 厚労省が公表している各状況でどのようにすべきかの指針は大変わかりにくいものとなっていますが、これは厚労省が悪いわけではなく、ワクチンの移行期には必然的について回る問題です。

 では、接種対象者(その父兄)はどうすればいいのでしょうか。厚労省のウェブサイトなどで確認してももちろんかまわないわけですが、かかりつけ医に相談するのが一番正確だと思われます。

 尚、太融寺町谷口医院には成人の方から不活化ワクチンの問い合わせがしばしばありますが、しばらくの間は見合わせたいと考えています。ここ数年の経緯からみて、ワクチン不足になる可能性があると思われるからです。(2年前のHibワクチン、昨年のHPVワクチンが供給不足になったのは記憶に新しいところです。現在はA型肝炎ワクチンの入手が困難になっていますし、狂犬病ワクチンは入荷の目処すらたちません)

(谷口恭)

注1:厚労省が公表している指針を下記に紹介します。(何度読んでもややこしいです・・・)

【3 種混合ワクチン未接種かつポリオワクチン未接種の者】
 ⇒ 4種混合ワクチン未導入の時点で開始する者:3種混合ワクチン+単独の
   不活化ポリオワクチン
 ⇒ 4種混合ワクチン導入後に開始する者:原則として4種混合ワクチン

【以下のいずれかのワクチンを接種している者】
 ・生ポリオワクチン1回
 ・単独の不活化ポリオワクチン1回以上
 ・3種混合ワクチン1回以上
 ⇒ 4種混合ワクチンの導入にかかわらず:原則として3種混合ワクチン
   +単独の不活化ポリオワクチン

・4種混合ワクチンの標準的な接種期間は以下の通り(3種混合ワクチンと同じ)。
 ・初回接種は、生後3か月から12か月に、20~56日の間隔をおいて3回
  ※3種混合ワクチンと4種混合ワクチンの間隔も20~56日までとする。
  (単独の不活化ポリオワクチンと異なり、接種間隔の上限は56日までと
   する)。
 ・追加接種は、初回接種から12か月~18か月後(最低6か月後)に1回。
  ※この年齢を超えた場合、これまで通り、7歳6か月に至るまでの間であ
   れば定期接種を実施できる。
  (単独の不活化ポリオワクチンと異なり、定期導入時点で追加接種も含まれる。)

参考
厚労省の <ポリオワクチン> (このサイトはわかりやすく解説されています)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/ 

医療ニュース:2012年5月1日 「ついにポリオ不活化ワクチン導入へ」
はやりの病気第100回(2011年12月) 「不活化ポリオワクチンの行方」