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2007年4月2日(月) 中国の梅毒蔓延が危機的に

 中国では梅毒が5大感染症のひとつに入るそうです。

 「現在、梅毒の蔓延が中国内で危機的な状況にあることはもっと注目されなければならない」

 南京の性感染症センターの研究者がチャイナ・デイリーの取材にそのようにコメントしています(報道は3月31日の同紙)。

 1990年代の初頭から比べると、中国では梅毒の罹患率は実に60倍にもなっています。2006年には人口10万人あたり13人が梅毒に罹患しています。しかし、この数字は中国全土の国立の性感染症クリニックのなかの26個の拠点クリニックのデータを集計したものに過ぎず、私立のクリニックや病院などを受診した人の数は含まれていません。したがって、実際にはこれよりも遥かに高い感染率であることが推測されます。

 中国の性感染症に従事するある医師は言います。

 「私の経験から言って、梅毒と診断される患者がひとり見つかると、他の検査を受けていない患者が7人から8人はいると推測される」

 中国では梅毒の母子感染も深刻化しており、1991年には10万人の新生児のなかで梅毒に感染して生まれるケースが0.01人だったのに対し、2005年には2,000倍の20人にまで増加しています。これは毎年約3,400人の梅毒に感染した赤ちゃんが生まれてくることを意味します。

 「もしも抜本的な梅毒対策が取られないなら、新生児の梅毒罹患が急増し国家は致命的なダメージを受けることになるだろう」、このような見方をする専門家もいます。

 梅毒は抗生物質で比較的簡単に治癒する性感染症です。中国では200元(約3,000円)程度で治療をおこなうことができます。しかしながら、もしも無治療で放置しておけば、性器の潰瘍、心血管や脊髄の障害、さらに脳にまで障害を与え、死に至ることもある感染症です。

 梅毒に罹患している相手と平均2回の性交渉をもてば感染するといわれています。

 中国で梅毒が特に深刻化しているのが沿岸の地域です。中国政府の公式データによりますと、トップは上海で人口10万人あたり55.3人、浙江35.9人、福建26.8人、北京24.9人、と続きます。

 どのような人に感染者が多いかというと、最もリスクが高いのが売春婦とその顧客です。顧客には、配偶者と離れる期間の長くなる地方からの出稼ぎ労働者が多いと言われています。また、都心に住むゲイたちの間でも感染率が急増しています。

 中国でこれだけ梅毒が急増している原因として、性交渉の低年齢化、多数のパートナーとの性交渉、低いコンドームの普及率などがあげられます。コンドームについては、中国産のものは品質が低すぎて使えない、との不満が売春婦たちからあがっているそうです。

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 梅毒に限らず、日本人が中国で性感染症に罹患するケースは最近急激に伸びてきているように思います。以前はタイでの感染の方が多かったと思われるのですが、現在では海外での感染はおそらく中国が1番でしょう。

 梅毒はコンドームを用いていても感染することがありますが、抗生物質の治療で比較的簡単に治ります。無症状だったけれどたまたま検査をしたら見つかった、という人も少なくありません。危険な性交渉のある人は一度検査を受けてみればどうでしょうか。

参考:梅毒