医療ニュース

2015年3月6日 Twitterでの表現が心疾患のリスクを予測

 心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクとして「A型気質」がしばしば指摘されます。「A型気質」というのは性格のことで、血液型のA型とはまったく関係ありません。Active(活動的)、Aggressive(攻撃的)、Ambitious(野心的)、Angry(怒りっぽい)といった性格で、「頑張り屋で積極的。いわゆる"やり手"で出世するタイプ」です。さらに「真面目で努力家」とも言えると思います(注1)。

 ときに、他人を蹴落としてまで出世を目指す、といったような否定的な感じで語られることもありますが、総じて言えばA型気質は悪くないキャラクターと認識されていると思います。辛いことがあってもそれを口にせず努力で解決する、といったイメージもあります。

 ところが、A型気質とはある意味で正反対の性格が心疾患のリスクになる、という研究が発表されました。

 Twitter上の言葉が否定的な人は心疾患死亡率が高い・・・

 医学誌『Psychological science』2015年1月20日号(オンライン版)にこのような報告がされています(注2)。

 この論文のポイントをまとめると次のようになります。

 まず、Twitter上の表現が、否定的な社会関係や、離別(原文はdisengagement、おそらく嫌いな人と関係を絶つ、という感じの意味だと思います)、また否定的な感情、特に怒りを露わにしたものであれば、そういった言葉を使う人は心疾患による死亡率が高いそうです。

 さらに驚くべきことに、Twitter上の表現による心血管系疾患死亡予測リスクは、一般的な人口統計学的因子(人種による差異など)、社会経済的因子(収入や職業による差異など)、そして、健康リスク因子(喫煙・糖尿病・高血圧症・肥満など)よりも正確だという結果がでたそうです。

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 この研究が正しいなら、従来のリスク評価を根底から見直さなければならなくなります。私が日頃患者さんをみている印象として、何事にも否定的なコメントを述べる人は、あまり健康的でないイメージがありますが、かといって心疾患になりやすいとか、死亡しやすい、といったような印象はありません。

 また、喫煙や糖尿病よりもTwitterでの否定的な表現の方が高リスクとは到底考えられません。もしも今回の研究が普遍的なものなら、健康診断のときは血液検査や血圧測定よりも、過去1ヶ月間のTwitterでの発言をチェックすることの方が重要ということになります。(それが事実なら、健診の費用も安くなり望ましいことですが・・・)
 
 この研究を正しいとしてしまうには時期尚早であり、今後のさらなる研究を待つべきだと私は思います。

 とはいえ、日頃からTwitterで否定的なコメント、特に怒りの感情を並べている人は、心疾患の一般的なリスク、つまり、喫煙、肥満などには注意すべきでしょう。


(谷口恭)

注1 以前、A型気質は心疾患だけでなく、AGA(男性型脱毛症)にもなりやすいのではないかという私の仮説を述べたことがあります。興味のある方は下記を参照ください。
医療ニュース2013年5月13日「男性型脱毛症(AGA)は心筋梗塞のリスク」

注2 この論文のタイトルは「Psychological Language on Twitter Predicts County-Level Heart Disease Mortality」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://pss.sagepub.com/content/26/2/159.abstract