医療ニュース

2015年4月27日 バリ島の狂犬病対策の是非

  現在バリ島では犬をめぐっての議論が白熱しているようです。

 きっかけは2015年1月27日、10歳のオーストラリアの女子が一匹の犬に噛まれたことです。幸いなことにこの犬は地元の動物保護団体が狂犬病ワクチンを事前に接種しており、この少女は軽い怪我を負っただけで大事には至りませんでした。

 しかし、この事故の2日後にバリ州の知事が「野良犬をすべて殺す」との発言をメディアの前でおこないこれが物議を醸しています(注1)。

 バリ島にはおよそ50万匹の野良犬がいると試算されています。

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 少女は助かったわけですし、少女に噛みついた犬も狂犬病ワクチンを接種していたのになぜ?、と感じますが、知事がこのような発言をおこなったのには理由があります。

 狂犬病はバリ島では以前から問題になっていましたが、近年は特に顕著で2008年以降でみると150人以上が狂犬病で死亡しています(注2)。外国人が犬に噛まれる事例も相次いでいるようです。知事の立場からすると、「観光」が税収の大部分を住めるバリ島で、観光客が遠ざかることを避けたかったのでしょう。

 しかし、50万匹もの野良犬を一掃せよ、となれば当然世界中の動物保護団体から反対意見が出ますし、ヒンドゥー教徒や仏教徒はイヌを大切にしますから地元の一般人からも批判されているようです。(インドネシアで最大多数の宗教はイスラム教で、イスラム教徒は犬を嫌いますが、バリ島ではヒンドゥー教徒と仏教徒が大部分を占めます)

 ゴールデンウィークにバリ島に旅行に出かけるという人も少なくないと思います。狂犬病ワクチンを接種していない人は、現地では動物に咬まれないように注意して(狂犬病ウイルスを持っているのは犬だけではありません)、もしも咬まれたら直ちに現地の医療機関を受診するようにしてください。(狂犬病ワクチンは感染してからでも効果が期待できます)

 尚、個人的な体験を付記しておくと、私はアジアのある島で早朝にジョギングをしているときに野良犬に囲まれて大変恐い思いをした経験があります。島でジョギングするときはたいてい海沿いを走るのですが、その日私は山道を走っていました。犬の鳴き声が聞こえてきた1~2分後には5~6匹の犬に囲まれてしまっていました。手に持ち替えたバックパックで比較的身体の小さな犬を振り払いながらそこを抜けだし全速力で疾走し事なきをえましたが、100メートル以上も複数の野良犬に追いかけられているときは本当に恐怖でした。私は狂犬病ワクチンを接種していますが、もしも接種していなかったらあの恐怖は何倍にもなっていたに違いありません。

 狂犬病ワクチンを接種している人も野良犬がいそうなところには近づかないのが賢明です。


注1:『The New York Times』が報道しています。記事のタイトルは「Beach Dogs, a Bitten Girl and a Roiling Debate in Bali」で、下記URLで記事が読めます。野良犬を捕獲している写真も掲載されています。
http://www.nytimes.com/2015/03/05/world/beach-dogs-a-bitten-girl-and-a-roiling-debate-in-bali.html?_r=0


注2:財デンパサール日本国総領事館のウェブサイトに記載があります。下記URLを参照ください。
http://www.denpasar.id.emb-japan.go.jp/japan/04_02safe.html

また、下記は同領事館の「安全対策情報等:2015年4月」です。狂犬病についての記載もあります。
http://bali.vc/press/201504



参考:はやりの病気第130回(2014年6月)「渡航者は狂犬病のワクチンを」

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2018/05/16

2018年4月17日より本ページで予告していましたように、2018年5月16日より麻疹風疹混合ワクチンの接種は、当院をかかりつけ医にしている方(及び当院に一度でも受診したことのある方)に限定させていただきます。