医療ニュース

2015年6月30日 減らない「まつ毛エクステ」のトラブル

 太融寺町谷口医院は都心部に位置していることもあり、美容関係のトラブルに合ったという患者さんがしばしば受診されます。脱毛時の熱傷と並んで多いのがまつ毛エクステンション、「まつ毛エクステ」の被害です。

 2010年2月、独立行政法人国民生活センターはまつ毛エクステの被害が相次いでいることを発表し、当院の「医療ニュース」(下記参照)でも報告しました。

 同センターの発表でトラブルが減少することが期待されたのですが、危害はむしろ増加傾向にあるようです。

 2015年6月4日、同センターは「後を絶たない、まつ毛エクステンションの危害」と題した報告をおこないました(注1)。
 
 同センターによりますと、まつ毛エクステンションの施術を受けたことにより目が痛くなったなどの危害情報が2010年度以降599件に上り、毎年100件以上で推移しているそうです。

 まつ毛エクステは法的に「美容行為」であり、施術者には美容師の免許が必要です。しかし無免許の者が施術することがあるようで、警察庁によりますと、美容師法違反での検挙数、つまり無免許でまつ毛エクステを実施したことでの検挙数が2013年に18件、2014年は12件に上ります。

 同センターでは報告書のなかで次の呼びかけをおこなっています。

まつ毛エクステンションは美容行為であり、業として行うに当たっては美容師の免許が必要です。美容師ではない人が施術をしていると思われたら、最寄りの保健所や都道府県の衛生担当部署へ情報提供してください。


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 ちなみに法律では「美容師は、美容所以外の場所において、美容の業をしてはならない」と定められています。(美容師法第7条) またこの法律では美容所の開設には都道府県知事への届出が義務づけられています。(同法第11条)

 以前当院にまつ毛エクステのトラブルで受診された患者さんは、「施術を受けたエステティックサロンは美容室とはまったく違うし、届出しているとも思えない。エステティシャンが美容師の免許を持っていたとも思えない。そもそも危険性についても説明はまったくなかった」と話していました。

 ちなみにこの患者さんは、このトラブルを国民生活センターや保健所に届けていません。おそらく、同センターが報告としてあげている数字は「氷山の一角」で、実際にはこの何倍、何十倍の被害者がいるのでしょう。

 法律にはたしかに「かたちだけ」で現実的でないものもありますが、まつ毛エクステのトラブルは接触皮膚炎(かぶれ)や感染症(細菌性結膜炎)も多くあり、早期治療が必要な被害です。

 トラブルが生じた場合、責任は加害者にありますが、後遺症が残ってからでは遅すぎます。「自分の身は自分で守る」という原則を思い出し、国民生活センターが呼びかけている「美容師ではない人が施術をしていると思われたら、最寄りの保健所や都道府県の衛生担当部署へ情報提供してください」という忠告は覚えておくべきでしょう。



注1:国民生活センターのこの発表は下記URLで全文を読むことができます。

http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20150604_1.pdf

参考:医療ニュース2010年2月22日「まつ毛エクステのトラブルが急増」