医療ニュース

2016年1月8日 デング熱ワクチン、ついに実用化へ

 2014年の東京での流行以来、デング熱に対する世間の関心は高まっており、最近は海外渡航前に診察室で相談される人も増えてきました。もちろんこれは好ましいことで、デング熱はマラリアと異なり、日中に人の多いプールサイドやビーチでも被害に遭いますから、我々医療者からみると、これまでの関心が低すぎた、というのが実情です。

 デング熱は日本人がよく行くリゾート地、たとえばハワイやプーケットやバリ島などでも被害は少なくありません。水着になるときは日焼け止めの上からDEETの塗布が必要です。しかし、水に濡れる度に何度も塗り直すのはけっこう大変です。

 デング熱は感染症ですからワクチンの登場が長年望まれていました。昨年(2015年)には医学誌『The New England Journal of Medicine』に開発中のワクチンに有効性があるとした論文(注1)が掲載され、秒読み段階に来ていました。

 そして、ついに2015年12月9日、メキシコでこのワクチンが世界で初めて承認されました(注2)。さらに12月22日、ワクチン製造者のSanofiはフィリピンで(注3)、12月28日にはブラジルでも承認されたことを発表しました(注4)。

 一方、デング熱で年間9万人以上の感染者と200人近くの死亡者を出しているインドでは、このワクチン導入に慎重な姿勢をみせています(注5)。有効性と安全性が充分に検証されていないのではないかとする意見があるようです。

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 冒頭で述べたように、プールサイドやビーチでDEETを完璧に塗るというのは思いのほか困難です。有効で安全なワクチンがあれば接種を希望する人が大勢いるでしょうし、私自身も接種します。しかし、デング熱ウイルスを媒介するネッタイシマカ(やヒトスジシマカ)は、チクングニア熱ウイルスや最近注目されているジカ熱ウイルスも媒介します。そしてこれらに対してデング熱ワクチンは無効です。

 ということは結局これまでと同様の蚊対策は必要ということになります。ワクチンではなく、蚊の発生自体を抑制する工夫が必要かもしれません。しかし仮に抑制できたとしても、今度は「生態系が乱れる」という問題が出てきます。なんとも悩ましいものです・・・。


注1:この論文のタイトルは「Efficacy and Long-Term Safety of a Dengue Vaccine in Regions of Endemic Disease」で、下記URLで概要を読むことができます。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1506223

注2:下記URLでメキシコでの承認の詳細が読めます。

http://www.sanofipasteur.com/en/articles/dengvaxia-world-s-first-dengue-vaccine-approved-in-mexico.aspx

注3:下記はフィリピンでの承認についてです。

http://www.sanofipasteur.com/en/articles/sanofi-pasteur-dengue-vaccine-approved-in-the-philippines.aspx

注4:下記はブラジルについてです。

http://www.sanofipasteur.com/en/articles/Dengvaxia-First-Dengue-Vaccine-Approved-in-Brazil.aspx

注5:インドのオンライン新聞「The Indian Express」に「Dengue fever vaccine Dengvaxia: Hope but with caution」というタイトルで報道されています。下記URLを参照ください。

http://indianexpress.com/article/explained/dengvaxia-dengue-vaccine-delhi-health-deaths-india-fever/

参考:旅行医学・英文診断書 → 〇海外で感染しやすい感染症について → 3) その他蚊対策など




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