医療ニュース

2017年1月23日 胃薬PPIは精子の数を減らす

 高い効果と安全性から世界中で幅広く使用されている胃薬PPI(プロトンポンプインヒビター)が、最近になって危険性が次々と指摘されるようになってきた、ということを何度かお伝えしてきました。簡単に振り返っておくと、「認知症のリスクになる可能性」(注1)、「血管の老化を促し動脈硬化のリスクを高める」(注2)、「脳梗塞のリスクとなる」(注3)、などです。

 今回お伝えするのは、PPIの新たなリスクかもしれない「精子の数が減る」という報告についてです。医学誌『Fertility and Sterility』2016年12月号(オンライン版)に論文が掲載されています(注4)。

 オランダの研究チームは、妊娠を計画しているオランダ在住の男性2,473人から、精子量の少ない241人を選抜し、対象グループとして精子数が正常の714人を選び、両グループとPPI使用との関係を分析しました。

 結果、精子の検査日の6~12ヶ月前にPPIを開始していた場合は精子数が減少するリスクが2.96倍高いことが判りました。一方、PPIを開始して6ヶ月以内であれば減少するリスクは認められなかったそうです。

 PPIは胃酸の分泌を強力に抑制する薬剤です。この研究から言えることは、PPIを長期服用し長期間胃内のpH値を上昇させることが精子に悪影響を与える可能性があるということです。(そのメカニズムは不明です) 尚、胃酸の分泌を下げる他の薬H2ブロッカーについては調査されていないようです。

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 妊娠を考えている男性、あるいはすでに不妊治療を開始している男性であっても、医師からPPIを中止するように言われている人はほとんどいないのではないでしょうか。女性の場合は妊娠中に飲んではいけない薬がたくさんありますが、男性の場合は精子に影響を与える薬はそれほど多くありません。

 一部の抗癌剤、リウマチの薬、免疫抑制剤、抗ウイルス薬などが該当しますが、おおまかにいってこれらは軽症でない疾患に使われることが多く、処方する際には医師や薬剤師から注意があります。比較的多く処方されている薬ではSSRIと呼ばれる抗うつ薬があります。これは海外で受精率が低下するという報告がありますが、大規模調査で認められているわけではありません。

 SSRIよりもPPIの方が処方量が多いのは間違いありません。今後、PPIの内服が長期にわたる可能性がある場合、あらかじめこの精子が減るリスクについて説明がおこなわれるべきかもしれません。


注1:はやりの病気第151回(2016年3月)「認知症のリスクになると言われる3種の薬」

注2:医療ニュース(2016年8月29日)「胃薬PPIが血管の老化を早める可能性」

注3:医療ニュース(2016年12月8日)「胃薬PPI大量使用は脳梗塞のリスク」

注4:この論文のタイトルは「Are proton-pump inhibitors harmful for the semen quality of men in couples who are planning pregnancy?」で、下記URLで概要を読むことができます。

http://www.fertstert.org/article/S0015-0282(16)62800-5/abstract

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