医療ニュース

2017年4月28日 胃薬PPIは認知症患者の肺炎のリスク

 つい数年前まで「最も優れた胃薬」と考えられていたPPI(プロトンポンプ阻害薬)の弊害が次々と指摘されています。インパクトが強かったのが認知症のリスク(注1)になるというものですが、他にも様々な副作用や弊害が指摘されています(下記「医療ニュース」参照)。

 今回紹介したいのは、「認知症患者にPPIを用いると肺炎のリスクが9割も上昇する」というものです。

 医学誌『Journal of the American Geriatrics Society』2017年3月21日号(オンライン版)に台湾の研究(注2)が紹介されています。

 研究の対象者は、PPIを投与された認知症患者786人です。PPIを投与されていない認知症患者との比較がおこなわれました。結果、PPIを投与されると89%も肺炎のリスクが上昇することが分かったのです。

 他の肺炎のリスクとしては、年齢(5%の上昇、以下同様)、男性(57%)、脳血管疾患の既往(30%)、慢性肺疾患(39%)、うっ血性心不全(54%)、糖尿病(54%)、向精神薬の使用(29%)という結果です。

 興味深いのは、H2ブロッカーと呼ばれる、PPIとよく比較される胃薬を用いれば肺炎のリスクが低下するという結果がでたことです。

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 おしなべて言えば、PPIはH2ブロッカーよりもよく効きます。ですが、太融寺町谷口医院の患者さんで、胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎などでPPIでなければコントロールできないという人はそう多くありません。前医でPPIを処方されていても、症状が安定していればH2ブロッカーに変更できることも多々あります。

 漢方薬なども含めて他の胃薬を併用したり、食生活の習慣を見直してもらったりして、PPIからの離脱に成功することはそう珍しくありません。以前は「安全」と言われていましたが、これだけリスクが指摘されていますから、今後PPIの使用は最小限にすべきでしょう。


注1:下記を参照ください。
はやりの病気第151回(2016年3月)「認知症のリスクになると言われる3種の薬」


注2:この論文のタイトルは「Association of Proton Pump Inhibitors Usage with Risk of Pneumonia in Dementia Patients」で、下記URLで概要を読むことができます。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jgs.14813/abstract

参照:医療ニュース
2017年1月25日「胃薬PPIは細菌性腸炎のリスクも上げる」
2016年12月8日「胃薬PPI大量使用は脳梗塞のリスク」
2016年8月29日「胃薬PPIが血管の老化を早める可能性」