コロナ後遺症(ポストコロナ症候群)の治療について

ここでは、ポストコロナ症候群(コロナ後遺症)でよくある質問を紹介します。

Q1:コロナ後遺症、ロングCovid、Post Covidなど、いろんな呼び方がありますが同じものと考えていいでしょうか

A1:当院で、新型コロナの後遺症の患者さんを初めて診察したのは2020年4月です。同じような患者さんが次々に説明のつかない症状を訴えて受診され、「これはおかしい」と感じました。そこで「ポストコロナ症候群」という名前を(勝手に)付けて、その後「コロナ感染後に症状が残る……」と訴える多くの患者さんを診ています。

最初の頃に診察していた事例については下記のコラムで紹介しています。

2020年5月12日「新型コロナ 治療後に健康影響の懸念」
2020年5月8日「長期的視野で「ポストコロナ症候群」に備えよ!」


呼び方については、海外ではPost-Covid Conditions, Post-Covid syndromeといったあたりが一般的です。

Q2:治療はどのようにするのですか

A2:一言で「ポストコロナ症候群」といっても、症状は多岐に渡ります。まず分類をする必要があります。当院では、次の2種類の分類をおこなっています。

〇感染のエピソードと症状による分類

・Type1:感染したのは確実で、感染時には酸素飽和度低下など、ある程度の重症化が認められた。感染後長期間経過しても肺野CTで間質性肺炎像が残っていたり、DダイマーやCRPなどのマーカーが依然高値を示したり、といった他覚的に有意所見があるタイプ。

基本的治療:咳喘息や間質性肺炎に準じた治療を検討します。このタイプは胸部X線や血液検査で異常が出ますから、改善度を調べるために何度か検査が必要になります。

・Type2:感染したのは確実で、感染時には酸素飽和度低下など、ある程度の重症化が認められた。有意な他覚的所見はないものの、倦怠感、抑うつ感、頭痛、月経不順などが持続しているタイプ。

基本的治療:通常は漢方薬、SSRI、ドグマチールなどから開始します。月経に関連する場合はLEPと呼ばれるホルモン剤を用いることもあります。

・Type3:感染したのは確実で、感染時の症状は無症状から重症まで様々。感染後、これまで落ち着いていた持病が再発・増悪するタイプ。例えば、安定していた片頭痛が再発を繰り返したり、口唇(性器)ヘルペスが頻繁に再発したり、安定していた喘息が発作を繰り返したりというケース。

基本的治療:原疾患の治療をおこないます。

・Type4:感染したのは確実だが軽症または無症状だった。後遺症の症状については他覚的に有意所見がないいものの、倦怠感、抑うつ感、頭痛、月経不順などが持続しているタイプ。

基本的治療:必要に応じて、漢方薬、SSRI、ドグマチールなどから開始します。月経に関連する場合はLEPと呼ばれるホルモン剤を用いることもあります。

・Type5:感染のエピソードはなくN抗体は陰性または未検査(あるいは検査拒否)。他覚的な有意所見はなく、倦怠感や抑うつ感などの症状のみを訴えるタイプ。

基本的治療:必要に応じて、漢方薬、SSRI、ドグマチールなどから開始します。


心血管症状の有無と持続期間による分類

・マイルドコロナ後遺症:味覚・嗅覚障害、脱毛、咳など心血管系疾患を除く比較的軽度の症状が感染後数週間から数か月持続して治癒する

基本的治療:必要に応じて、漢方薬、SSRI、ドグマチールなどから開始します。

・ミディアムコロナ:心血管系疾患に関わる症状が持続する。軽症で終わる場合もあるが、心筋梗塞や脳卒中など致死的な疾患を発症することもある

基本的治療:心臓・脳の注意深い経過観察をします。生活習慣病がある場合は、やや厳しめにコントロールします。禁煙治療、ダイエット治療も勧めます。

・ロングコロナ:主に倦怠感、抑うつ感、記憶力低下などが感染後6か月を超えても持続する

基本的治療:必要に応じて、漢方薬、SSRI、ドグマチールなどから開始します。

Q3:コロナ後遺症は慢性疲労症候群と同じなのですか

A3:下記コラムを書いてから同様の質問を多数いただくようになりました。倦怠感、抑うつ感、記憶障害などが長期間持続する事例(ロングコロナ)は、まるで慢性疲労症候群(最近は「ME/CFS」という表現がよく使われます)にそっくりなことから、当院では、ロングコロナの診療は慢性疲労症候群と同じようにおこなっています。

参考:
2022年1月31日「新型コロナ 後遺症の正体は「慢性疲労症候群」か」
2022年2月8日「ポストコロナ症候群とME/CFSの共通性」


Q4:コロナ後遺症は運動を絶対にやってはいけないと聞きましたが本当ですか。

A4:なぜか同じ質問が増えています。「運動で余計に悪化する」のは、上記のロングコロナの場合です。それ以外は、適度な運動によって改善することが多いと言えます。また、ロングコロナの場合も、心拍数が上がるような運動には充分な注意が必要ですが、まったく動いていけないわけではありません。

参考:
2022月10月24日「コロナ後症状が半年以上続くなら運動はNGか?」


Q5:すぐに効く薬はないのですか

A5:コロナワクチンを接種すれば劇的に改善することがあります。ですが、余計に悪くなることもありますから、あまり勧められません。


Q6:治療してもよくならない場合はどうすればいいのですか

A6:重症性の高い場合、大学病院などと連携して治療をおこないます。それでも改善しない場合もありますが、当院で長期的にフォローしていきます。決して「もうできることはありません」とは言いません。


Q7:前医では自費治療を勧められました

A7:よくある相談です。前医で「〇千円の点滴を勧められた」「イベルメクチンを高額で買わされた」といった声をしばしば聞きます。後遺症の治療は原則として保険診療でおこなうべきであり、当院では自費治療はしていません。


参考:
〇はやりの病気
第222回(2022年2月) ポストコロナ症候群に有効な治療薬はあるか
第221回(2022年1月) ポストコロナ症候群の正体は慢性疲労症候群か
第213回(2021年5月) 分かり始めた「ポストコロナ症候群」

第210回(2021年2月) よく分からなくなってきた「ポストコロナ症候群」
第204回(2020年8月) ポストコロナ症候群とプレコロナ症候群


〇毎日新聞「医療プレミア」
2022年8月29日「新型コロナ 「心の不調や弱点」を抱える人は重症化に注意」
2022年6月13日「新型コロナ 今も残る「2度目の後遺症」の心配」
2022年5月30日「新型コロナ 「私は後遺症」と悩む患者は5タイプに分けられる」
2022年3月14日「新型コロナ 「感染+基礎疾患」で死なないために」
2022年1月31日「新型コロナ 後遺症の正体は「慢性疲労症候群」か」
2021年9月27日「新型コロナ 後遺症の原因は「脳の酸素不足」か」
2020年7月22日「新型コロナ 回復後も続くだるさや息切れ」
2020年5月12日「新型コロナ 治療後に健康影響の懸念」

〇日経メディカル
2022月10月24日「コロナ後症状が半年以上続くなら運動はNGか?」
2022年5月23日「「偽性コロナ後遺症」という病い」
2022年2月8日「ポストコロナ症候群とME/CFSの共通性」
2022年1月17日「ポストコロナ症候群の患者指導にウエアラブルデバイスを活用」
2021年6月2日「ポストコロナ症候群の謎が解けたかもしれない」
2020年5月8日「長期的視野で「ポストコロナ症候群」に備えよ!」