医療ニュース

2009年6月25日(木) 和歌山で野兎病感染

 2008年7月、和歌山県内で初めての野兎病(やとびょう)の感染が確認されています。

 和歌山県古座川町在住の60代の女性がダニにかまれ感染し、最初に診療にあたった診療所で採取した血液の検査から野兎病が発覚したようです。(報道は6月20日の毎日新聞)

 女性は抗生物質の注射などで翌日には快方に向かったそうです。

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 野兎病は、病気の名前から想像できるようにノウサギから感染します。以前の日本にはウサギを食べる習慣がありましたから、ウサギの血液に触れることによって感染することが多かったのです。北海道、東北、関東地方での報告が多いようです。

 しかし、ノウサギを食べる人は現在ではほとんどいませんから、最近では、野兎病に罹患する人はあまり多くありません。(私も診察したことがありません)

 感染経路はノウサギの血液などに直接接触する以外にも、今回の報道にあるようにダニに刺されることによる感染が考えられます。つまり、ダニが野兎病の病原体(野兎病菌)を吸血することで体内に取り込み、ヒトに刺すときにその菌をヒトの体内に注入しているというわけです。

 しかし、以前(戦後あたりの時代)の野兎病が多かった時代ですら、和歌山での報告はなかったわけで、野兎病自体が減少しているこの時代に和歌山で発見されたということは注目に値します。

 つまり、野兎病菌を保有しているダニが全国的に増殖している可能性があるのではないか、私はそう感じています。以前からこのサイトで何度か取り上げているようにダニに刺されることには注意を払わなければなりません。ライム病、日本紅斑熱、恙虫病、これらはいずれもダニに刺されることが原因になります。

参考:
医療ニュース 2008年5月19日「日本紅斑熱に注意」
医療ニュース 2008年8月7日「宮崎の女性がダニに刺されて死亡」

(谷口恭)