医療ニュース

2010年7月2日(金) ビタミンB6とメチオニンが肺ガンを予防する?

 このところ、ビタミンB6が心臓病や大腸ガンの予防に有効という研究報告が相次いでいますが(詳しくは下記参照)、今度は肺ガンを予防するかもしれないという研究が発表されました。

 フランスの「国際ガン研究センター(International Agency for
Research on Cancer)」の研究者であるMattias Johansson氏が医学誌『JAMA』2010年6月16日号に研究結果を発表しています(下記注参照)。

 1992~2000年にかけて10ヵ国519,978人が対象におこなわれたガンと栄養素の研究にEPICというものがあるのですが、Johansson氏らの研究チームは、このEPICの対象となり血液採取データが残されている385,747人について追跡調査をおこないました。

 調査の結果、2006年までに肺がんを発症した人は899人でした。この899人の対象グループとして、国籍や性別、誕生日、血液採取日を合致させた1,770人を選び、両グループの血中の4種類のビタミンB(B2、B6、葉酸、B12)と、メチオニン、ホモシステイン濃度を比較し、肺がん発症率との関連を分析しています。

 その結果、血中ビタミンB6の濃度が最も高いグループは、最も低いグループに比べ肺ガンを発症する確率が0.44となっています。(グループを血中ビタミンB6の濃度に応じて4つのグループにわけ、最も高いグループと低いグループを比較し、最も低いグループに100人の肺ガン患者がいるとすると、最も高いグループでは44人しかいない、という意味です)

 また、血中メチオニンの濃度が最も高いグループは、最も低いグループに比べ肺ガンを発症する確率は0.52となっています。

 肺ガンについての調査ですから、喫煙の有無が気になりますが、今回の調査では喫煙に関係なく有意差が認められています。つまり、喫煙者、過去の喫煙者、非喫煙者のいずれにおいてもビタミンB6、メチオニンの血中濃度が高いほど肺ガンにかかりにくいという結果がでています。

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 ならばビタミンB6を積極的に摂取しよう、ということになりますが、以前もお伝えしましたように、ビタミンB6が含まれている食品というのは、玄米、ニンニク、ソバ、鶏肉、豚肉、魚、などで、いずれも比較的普段から食べているもの、もしくはあまり大量には食べられないものです。日本人が比較的よく食べるものとしてはタコがあり、広島大学がタコから健康食品をつくることを検討しているそうです。

 メチオニンは必須アミノ酸の1種で、必須アミノ酸というのは人間が体内で合成することができず食品から摂らなければなりません。メチオニンには、血液中のコレステロール値を下げ、活性酸素を取り除く作用があるとされ、そのため健康食品にはよく入れられています。

 メチオニンを多く含む食べ物としては、ニンニク、ホウレンソウ、グリーンピース、トウモロコシ、ピスタチオ、カシューナッツ、インゲンマメなどが代表ですが鶏肉や魚にも含まれています。

 やはり結局のところ、「バランスのよい食事を摂るのが一番」ということになると言えるでしょう。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは「Serum B Vitamin Levels and Risk of Lung
Cancer」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/303/23/2377?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Mattias+Johansson&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

参考:医療ニュース 
2010年4月30日 「ビタミンB6、葉酸などで心血管疾患のリスク低下」
2010年4月3日「やはりビタミンB6は大腸ガン予防に有効か」
2008年6月1日「心疾患の予防にはビタミンB6」
2007年8月4日「大腸がんの予防、男性ビタミンB6、女性はコーヒー」