医療ニュース

2010年9月21日(火) 待望のHTLV-1妊婦健診、年内実現の見込み

 HTLV-1(成人性T細胞白血病ウイルス)についてはこのサイトでも何度か紹介しています。国内で感染者が100万人以上もいる重要な感染症で母子感染が主要な感染ルートの1つなのに、妊婦健診で抗体検査をしている自治体が少なすぎる、ということを述べたこともあります。(詳しくは下記コラムなど参照ください)

 そのHTLV-1の妊婦に対する抗体検査が全国一律で実現しそうになってきました。

 9月13日、菅直人首相は、HTLV-1の全国一律の妊婦に対する抗体検査やカウンセリングを本年度中に始める考えを表明しました。自らが官邸に設置した「HTLV-1特命チーム」の初会合で語ったそうです。(報道は9月14日の共同通信など)

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 国内でHIV陽性が判明した人が累計でおよそ18,000人、検査しておらず感染に気付いていない人を含めても数万人程度だと言われています。そしてHIVは妊婦健診の際、最近ではほぼ全例おこなわれています。一方、HTLV-1は国内に100万人以上感染者がいるのにもかかわらず(高齢者が多く、若年者に多いHIVとは単純には比較できませんが)、これまで妊婦健診で抗体検査を実施していた自治体はごくわずかでした。

 詳しくは下記のコラムなどを参照してほしいのですが、以前この国の行政はHTLV-1感染症のことを「風土病」と捉えて対策を怠ってきました。「もっと早くに妊婦健診に取り入れるべきだった」のは自明ですが、「風土病」などと考えられていた時代から考えると随分進展しているとみるべきなのかもしれません。

(谷口恭)

参考:
医療ニュース2009年6月29日「HTLV-1が大都市で増加」
はやりの病気第47回「誤解だらけのHTLV-1感染症(前編)」
はやりの病気第48回「誤解だらけのHTLV-1感染症(後編)」
NPO法人GINAウェブサイト「少しずつ注目され始めたHTLV-1」