医療ニュース

2011年9月10日(土) 適度な飲酒がアルツハイマーを予防

 適度な飲酒、特にワインは、アルツハイマーを含む認知症のリスクを軽減させる・・・

 このような嬉しい研究結果が医学誌『Neuropsychiatric Disease and Treatment』8月号(オンライン版)に掲載されました(注)。

 論文によりますと、研究チーム(米国Loyola大学シカゴ校Stritch医学部)は、1977年以降に実施された合計143個の研究を分析しています。対象者は365,000人以上にのぼるそうです。

 その結果、適度の飲酒をする人は、アルツハイマーを含む認知症を発症するリスクが23%低いということが判ったそうです。その一方で、大量の飲酒は、逆に認知症のリスクを増大するとの結果もでています。(しかしこれは統計学的に有意なものではなかったそうです)

 なぜ、飲酒が認知症を予防するのかについて、研究チームは、アルコールが脳の血流や脳代謝を改善させる可能性を指摘しています。また、少量のアルコールで脳細胞に小さなストレスが与えられ、認知症の原因となる大きなストレスに対処する能力が向上するという説もあるそうです。

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 「適度」とはどれくらいかというと、論文では、「男性で1日2杯、女性で1日1杯」としています。認知症のリスクが上がるかもしれない「大量」は「1日3~5杯」とされています。また、お酒の種類では、「ビールや蒸留酒に比べてワインに高い効果があった」とされています。

 この手の研究で最も注意しなければならないのは、これは疫学であり個人には必ずしもあてはまるわけではない、ということです。つまり、すべての人が飲酒によって認知症のリスクが23%低下するわけではないのです。ある人は、飲酒でアルツハイマーを防げるかもしれませんが、別の人はまったくお酒に影響を受けない、ということもあるわけで、全体でみてみれば23%リスクが下がっていましたよ、という話です。

 ですから、お酒は楽しんで飲むことには私も賛成ですが、まちがっても認知症予防のみを目的とした飲酒はすべきではありません。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは「Moderate alcohol consumption and cognitive risk」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.dovepress.com/articles.php?article_id=8067


参考:医療ニュース
2010年8月23日「飲酒が関節リウマチに有効?」
2010年5月21日「飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減」
2010年4月8日「適度な飲酒は女性の体重増加を抑制」
2009年10月8日「酒飲みの女性は乳ガンになりやすい」
2009年5月26日「「孤独な酒」は脳卒中の危険性2倍」
2009年5月15日「お酒弱いのに飲酒・喫煙で食道ガンのリスク190倍」
2008年3月3日「お酒は憂さ晴らしに逆効果?!」