医療ニュース

2009年11月16日(月) 禁煙に失敗するのは低タール

 タバコを低タールに切り替えても、有害物質を吸い込む量に変化はなく健康を害するリスクは何ら変わりない、という情報を以前お伝えしましたが(下記参照)、低タールのタバコに変えた方が禁煙に失敗しやすいという研究が発表され話題を呼んでいます。(報道は11月3日のHealth
Day News)

 この研究は米国ピッツバーグ大学の研究者らによっておこなわれ、英国医学誌『Tabacco Control』オンライン版の11月4日に掲載されています。

 この研究は、過去1年以内に喫煙者であった米国の30,800人を対象としておこなわれています。対象者の38%が「ライト」などと謳われた低タールのタバコに切り替えていて、禁煙成功率は切り替えていない人に比べて46%も低いという結果となっています。

 なぜ低タールに切り替えると禁煙しにくいかについて、研究者らは、健康意識の高い人が「健康によい(とされる)たばこを吸っているからリスクを心配する必要はない」と考え、喫煙を継続する可能性があることを指摘しています。

 この記事を報道したHealth Day Newsによりますと、英国ロンドン大学のある学者は、低タールのタバコに切り替える人は、既にたばこへの依存度が高く禁煙しにくい人である可能性を指摘しているそうです。参考までに、ヨーロッパでは、タバコに「低タール」など、安全性をほのめかす名称をつけることが禁じられています。

 また、Health Day Newsは、この記事のなかで別の論文も紹介しています。医学誌『Journal of Epidemiology and Community Health』オンライン版の11月3日号に掲載された英国ヨーク大学による母子14,000組を追跡した研究によりますと、妊娠中に母親が喫煙すると、生まれた子どもの注意欠陥多動性障害(ADHD)などの行動障害リスクが高くなるそうです。

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 以前にもお伝えしましたが、禁煙指導をしている私の経験からいっても、低タールなどの軽いタバコを吸っている人は禁煙に成功しにくい印象があります。一番ダメなのは、メンソール系の1mgのタバコです。(あえて名称は出しませんが)だいたい3種類くらいの銘柄が最も失敗しやすいと私は感じています。

 決して勧めているわけではありませんが、禁煙を本気で考えるなら、メンソールでない少しきつい(高タールの)タバコに切り替えてから禁煙する方が成功しやすいのではないかとすら思うことがあります。

(谷口恭)

参考:
医療ニュース2009年8月17日「低タールのタバコにしても効果なし」
医療ニュース2008年12月15日「女性の喫煙は14.5年も短命に」
はやりの病気第66回「メンソールの幻想と私の禁煙」