医療ニュース

2009年4月22日(水) タミフルの異常行動は「否定できず」

 インフルエンザ治療薬のタミフルが異常行動の原因になるのかならないのか・・・。このウェブサイトでも何度か取り上げましたが、この見解をめぐって専門家の間でも意見が別れていました。

 4月18日、厚生労働省研究班が最終報告書を発表し、「タミフルを服薬した10歳以上の子供は、服薬しなかった子供に比べて、飛び降りなどの深刻な異常行動をとるリスクが1.54倍高い」、という分析結果が出ています。(報道は4月20日の読売新聞)

 報告書では「タミフルとの因果関係は否定できず、深刻な異常行動に絞った新たな研究を実施すべきだ」、と指摘されており、現在原則中止となっている10代への使用はこれからも中止となる見込みです。

 今回の研究は、2006年度からインフルエンザと診断された18歳未満の患者約1万人を集め、解析がおこなわれています。このうち、「急に走り出す」などして死亡やけがに結びついた深刻な異常行動に限定して調べたところ、服薬した場合にリスクが1.25倍高い、という結果が出ています。特に注意喚起の対象となっている10歳以上でみた場合、リスクは1.54倍となっています。

 一方、「うわごとを言う」など軽症のものも含めた異常行動を起こす全体のリスクは、飲まなかった場合に比べて0.62倍と低い結果となっています。

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 これまでに、「タミフルと異常行動には関連がない」とまとめられた報告もありましたから、今回の最終報告は物議をかもすことになるでしょう。また、「軽症の異常行動はタミフルを服用した場合の方が少ない」というのも、タミフルに危険性があるという観点からは理解したがいように思われます。

 今年はタミフル耐性のインフルエンザが流行しましたから、今後はタミフルよりも、もうひとつのインフルエンザの特効薬であるリレンザの使用が広がることが予想されます。

 ただ、リレンザについても異常行動が報告されていますから、リレンザと異常行動の関係についての詳しい調査を厚生労働省に期待したいと思います。

参考:医療ニュース
2008年8月4日「波紋を呼んでいるタミフル調査結果」
2008年7月14日「タミフルは異常行動に関係なし」
2009年1月17日「タミフル耐性のインフルエンザが急増!」
2009年2月2日「リレンザ使用の高校生が転落死」

(谷口恭)