医療ニュース

2011年5月30日(月) 不活化ポリオワクチンがついに導入か

 ポリオのワクチンは、世界的には「不活化」を使うのが一般的になってきているのに日本ではいまだに「生」を使っていることが問題である、ということはこのサイトで何度かお伝えしてきましたが(下記医療ニュース参照)、ついに日本でも不活化ワクチンが導入される見込みがでてきました。

 2011年5月26日に開催された厚生科学審議会感染症分科会の予防接種部会で、早ければ2012年度にも不活化ポリオワクチンが導入される見通しが示されました。

 厚生労働省によりますと、国内ワクチンメーカー4社が不活化ポリオワクチンとDPTワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合ワクチン)を混合した、言わば「4種混合ワクチン」を開発中で、2011年中に承認申請がおこなわれる見込みだそうです。

 ただし、DPTワクチンをすでに接種している人が、この新しい4種混合ワクチンを接種することに問題はないのかという懸念があります。そこで、厚生労働省では、不活化ポリオワクチン単独のワクチンを国内で開発すべきだと提案しています。同省の担当者は、「今後、不活化ポリオワクチン単独のワクチン開発に協力していただける企業を探していく」とコメントしているそうです。(報道は5月26日の読売新聞など)

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 まず基本的なことをおさらいしておくと、生ワクチンの問題は、①非常に稀ではあるがポリオに感染したときと同じような麻痺症状がおこりうること、②成人には接種できないこと、です。このため、一部の小児科クリニックや旅行医学を積極的に実践しているクリニックでは不活化ポリオワクチンを輸入して接種しています。(尚、2001年度からの10年間で、生ワクチンでポリオウイルスに感染したときと同じような症状がでた例は15例、生ワクチンを接種した児童の便などから感染したと思われる二次感染が6例報告されています)

 しかし、単独ワクチンよりも4種混合ワクチンが先に開発されたのはなぜなのでしょうか。混合ワクチンというのは、単純にそれぞれのワクチンを足してつくられるわけではありませんから、単独ワクチンよりも4種混合ワクチンの開発が先におこなわれたことに合理的な理由があるのでしょう。しかしながら、なぜ厚生労働省は国内メーカーにこだわり、海外で実績のある不活化ポリオワクチンを輸入しないのか、という疑問が私にはぬぐえません。

 国内メーカーがこれから開発するよりも、すでに海外で実績のあるワクチンを輸入して使う方がずっと現実的だと思うのですが、政治的な問題(例えばワクチンメーカーが官僚の天下り先になっているとか・・・)を疑いたくなります。

(谷口恭)

参考:医療ニュース
2010年12月17日「ポリオ不活化ワクチンを求め患者団体が署名提出」
2010年2月22日「神戸の9ヶ月男児がポリオを発症」
メディカルエッセイ第90回(2010年7月)「理想のワクチン政策とは・・・」