医療ニュース

2020年10月31日 胃薬PPIは糖尿病のリスクにもなる

 このサイトでは特定の薬を充分な根拠もないままに高評価したり、逆に低く評価したりはしていないつもりです。常に客観的な観点から医療情報をお伝えすることを心がけています。ですが、胃薬PPIに関しては否定的なものを取り上げる機会が増えています。認知症、脳梗塞、骨粗しょう症などのリスクになることが指摘されているPPIは新型コロナのリスクにもなる可能性があることを過去に伝えました。今回は糖尿病との関係です。

 医学誌『Gut』2020年9月28日号(オンライン版)に「胃薬PPIの定期的な服用と2型糖尿病のリスク:3つの前向きコホート研究の結果(Regular use of proton pump inhibitors and risk of type 2 diabetes: results from three prospective cohort studies)」というタイトルの論文が掲載されました。中国人の学者による研究ですが、対象は米国の医療従事者が対象の3つの大きな研究(Nurses' Health Study(NHS)、NHSⅡ、Health Professionals Follow-up Study(HPFS))です。

 調査開始時に糖尿病を発症していない人が204,689人で、調査期間中に10,105人が糖尿病を発症しています。PPIを使用していない人に比べて、PPIの長期使用者で糖尿病のリスクが24%上昇していました。リスクは使用期間が長いほど上昇するようで、使用期間が0~2年のグループでは発症リスクが5%上昇するのに対し、2年以上の使用では26%になっています。

 興味深いことに、このリスクはPPIを中止すると減少するようです。使用中止期間が0~2年であれば17%、2年以上になれば19%のリスク低下が確認されています。

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 過去にも述べたように、これまでPPIを内服していた人でも、少しの生活習慣の改善と薬の変更でいい状態が維持できる人は少なくありません。PPIは頼りになる薬ですが、長期使用を減らしていく対策も必要です。


医療ニュース
2020年8月6日 胃薬PPIは新型コロナのリスクになる
2019年12月28日「やはり胃薬PPIは認知症のリスクを増やすのか」
2018年9月28日「胃薬PPIで認知症のリスクは増加しない?!」
2018年5月14日「PPI使用で脳梗塞のリスク認められず」
2017年4月28日「胃薬PPIは認知症患者の肺炎のリスク」
2018年4月6日「胃薬PPIは短期使用でも骨粗しょう症のリスクに」
2017年1月23日「胃薬PPIは精子の数を減らす」