医療ニュース

2014年2月28日 ビタミンDのサプリメントに有益性なし

  ビタミン剤のサプリメントは健康にいいどころか危険性が多く、安易に使用されるべきでないことが指摘されるようになってきていますが(それでもいまだに過剰な宣伝は一向におさまらず使用者は多いようです・・・)、そのビタミン剤のなかで比較的有益ではないか、とされていたのがビタミンDです。

 しかしそのビタミンDへの期待も"幻想"に過ぎなかったようです。

 医学誌『Lancet Diabetes & Endocrinology』2014年1月24日号(オンライン版)に掲載された論文(注1)によりますと、ビタミンDのサプリメントによる健康上の有益性はほとんどないそうです。

 この研究はニュージーランド、オークランド大学のMark J Bolland氏らによっておこなわれています。研究者は、これまでに発表されたビタミンDのサプリメントの効果を評価した複数の調査を総合的に分析(メタ分析)し、ビタミンDの有益性を改めて検討しています。

 分析の結果、虚血性心疾患(患者総数48,647例)、脳血管障害(患者総数46,431例)、ガン(患者総数48,167例)、骨折(患者総数76,497例)におけるビタミンDのサプリメントの効果は、カルシウムの併用をしていてもしていなくても、有意な効果は認められなかったそうです。別の見方をすると、ビタミンDのサプリメントを摂取しても、これら疾患のリスクは15%以上は減少しないことが判ったそうです。

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 ビタミンDのサプリメントの効果が「15%以上は減少しない」ということは「15%近くは減少する」ということでそれならば有益ではないか、という見方をしたくなりますが、これは効果を多く見積もって15%未満ということであり、実際は効果はほとんどないとみるべきでしょう。また、ビタミンDを過剰摂取したときの副作用にも注意しなければなりません。

 ただしビタミンDは危険なものでは決してなく人間には必要なものです。肉や卵に豊富に含まれていますからバランスよく食事をしていれば欠乏することはないのですが、ベジタリアンの人たちは不足しがちになります(注2)。ですから、ベジタリアン(特にヴィーガン)の人たちは肉や卵が食べられないならサプリメントでの摂取も検討すべきです。

 まとめると、ビタミンD欠乏症になればサプリメントも含めてビタミンDの積極的摂取を検討すべき、一方欠乏症でない人はサプリメントに有益性はほとんどないことを理解し、有害性に注意すべき、となると思います。

(谷口恭)



注1:この論文のタイトルは「The effect of vitamin D supplementation on skeletal, vascular, or cancer outcomes: a trial sequential meta-analysis」で下記の論文で概要を読むことができます。
http://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587%2813%2970212-2/abstract


注2:ベジタリアンについては下記も参照ください。
メディカルエッセイ第126回(2013年7月)「我々はベジタリアンの道を進むべきか」

参考:医療ニュース
2014年1月28日「やはりビタミン・ミネラルのサプリメントは利益なく有害」
2010年2月1日「ビタミンDの不足は大腸ガンのリスク」
2010年2月11日「ビタミンDが不足すると喘息が悪化」