海外で感染しやすい感染症について


〇海外で感染しやすい感染症について

地域にもよりますが、海外には日本にはない感染症や、日本にもあるけれど海外での方がずっと感染しやすい感染症が多数あります。渡航先の特性を考えて、必要なワクチン接種、薬(予防薬含む)の準備などをおこなう必要があります。


◎日本を発つ前にすべきこと
 
1) ワクチン(予防接種)について

<参考>「予防接種をしよう」も参照ください。尚、全般的に日本のワクチンは高価ですし、日本では入手できないものもあります。海外でワクチンを接種するという方法もあります。こちらの表を参照ください。


①B型肝炎ウイルス

(日本国内も含めて)世界中どこに渡航するときもワクチン接種及び抗体形成の確認が必要と考えるべきです。日本ではようやく2016年12月に定期接種となりましたが対象は新生児のみです。成人の場合は医療機関などで自主的に接種することになります。

→下記ページも参照ください。
肝炎ワクチンの接種をしよう!


②A型肝炎ウイルス

一部の先進国を除き、ほとんどの国や地域渡航時に接種しておくべきです。特に屋台など現地の人が食べるのと同じような食事をおこなう人は必須です。A型肝炎ウイルスのワクチンはかなりの確率で2回の接種でも抗体が形成されますが、長期維持のためには3回接種が望ましいといえます。

→下記ページも参照ください。
肝炎ワクチンの接種をしよう!


③狂犬病

(日本と)イギリスを除くほとんどの国では危険性があります。現在でも狂犬病で死亡する人は世界で年間59,000人もいます(注1)。発症すると100%死に至る病です。

注1:医学誌『PLOS Neglected Tropical Diseases』2015年4月16日号(オンライン版)に報告があります。論文のタイトルは「Estimating the Global Burden of EndemicCanine Rabies」で、下記URLで全文を読むことができます。
http://journals.plos.org/plosntds/article?id=10.1371/journal.pntd.0003709

参考:はやりの病気第130回(2014年6月)「渡航者は狂犬病のワクチンを」
医療ニュース 2015年5月8日「バンコクの飼い犬の4割が狂犬病のリスク」
医療ニュース 2015年4月27日「バリ島の狂犬病対策の是非」


④日本脳炎

アジアの豚がいる地域に行くときには必須と考えるべきです。

参考:はやりの病気
第63回(2008年11月)「日本脳炎を忘れないで!」
毎日新聞医療プレミア「日本脳炎のワクチンが今必要なわけ」2016年12月18日


⑤破傷風トキソイドの接種

ほとんどの人は子供の頃に接種していますが、成人すれば抗体が消えている人が少なくありません。10年に一度の追加接種が推奨されています。1968年までに生まれた人の場合は、幼少期に三種混合ワクチンを接種していない可能性が強く、初回接種(4~8週間隔で2回)と追加接種(初期接種後6~18カ月に1 回接種)が推奨されます。その後は10年に一度追加接種をすれば抗体価が維持できると言われています。


⑥麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘(水ぼうそう)

これら4つの抗体が形成されているかは確認しておくべきです。2016年にジャカルタで麻疹に感染した30代男性は、麻疹脳炎を発症し一命は取り留めたものの後遺症が残りました。

参考:毎日新聞医療プレミア「本当に「大丈夫」?渡航前ワクチンの選び方」2017年6月4日



2) マラリア予防内服について

マラリア予防薬には①メフロキン、②マラロン、③ビブラマイシンの3種があります。


①メフロキン
副作用が多いこととアジアでは無効なことが多いことから現在当院で処方することはほとんどありません。


②マラロン
2012年12月に処方可能となった新しい薬です。帰国後の内服が1週間ですむことから使いやすいのですが、欠点は価格が高い(1錠約800円。薬局により異なります)ということです。マラリアの可能性のある地域への渡航2日前から内服を開始し、その地域を離れてから1週間が過ぎるまで継続します。


③ビブラマイシン
1錠70円と価格が安いのが利点です。マラリアの可能性のある地域への渡航数日前から内服を開始し、その地域を離れてから4週間がたつまで1日1錠を継続します。(ビブラマイシンはマラリア予防薬としては日本では承認されていませんが、実際には最も多く使われている予防薬であり、副作用も上記メフロキンやマラロンに比べると少ないと言えます)

参考:はやりの病気第141回(2015年5月)「マラリアで死んだ僕らのヒーロー」


3) その他蚊対策など

マラリアの予防内服をしていても、デング熱やチクングニア熱に対する蚊の対策をしなければなりません。DEETと呼ばれる虫除けスプレーやクリームの用意(ただし日本製のものより現地で購入した方が濃度が高く有効性が高い)や蚊取り線香(こちらは日本製のものの方が高品質)の準備は必要です。シトロネラと呼ばれるレモングラスに似た植物からつくられた一種のアロマも有効とされていますが、よほど大量に用いないと効果が期待できないとも言われています。

最近は「イカリジン」と呼ばれる、DEETより安全性が高く、シトロネラより有効性が高いとされている新しい虫除けが注目されています。また、日本で入手可能なDEETとイカリジンの最高濃度がかつてはそれぞれ12%、5%でしたが、現在はそれぞれ30%、15%まで濃度を高くした製品が発売されています。


〇DEET30%配合
・ 医薬品 プレシャワー30EX ミストスプレー80mL (KINCHO)
・ 医薬品 サラテクトリッチリッチ30(缶スプレー200ml、ミストスプレー200ml,60ml)(アース製薬株式会社)
・ 医薬品 スキンベーブプレミアム(缶スプレー200ml、ミストスプレー200ml)(フマキラー)


〇イカリジン15%配合
・ プレシャワーPRO ミストスプレー80mL (KINCHO)
・天使のスキンベーププレミアム(缶スプレー200ml、ミストスプレー200ml,60ml)(フマキラー)


◎消化器感染対策について

現地の料理を食べて下痢をする人は少なくありません。初めての地域に渡航する場合は整腸剤(乳酸菌製剤など)を期間中飲まれることをすすめます。

水、氷、カットフルーツなどは要注意です。水道水をそのまま飲める国は世界中を探してもごくわずかしかありません。日本は幸運なことにその稀な国のひとつです。ちなみに、トイレで紙を流していい国もアジアではほとんどありませんので注意してください。


参考:はやりの病気
第133回(2014年9月)「デングよりチクングニアにご用心」
第126回(2014年2月)「デング熱は日本で流行するか」


4) 帰国してから注意すること

例えばマラリアは潜伏期間が1ヶ月になることもありますし、B型肝炎は(ワクチンを接種していても抗体が形成されていなければ)感染して数ヶ月が経過してから倦怠感が出現することもあります。
海外から帰国して2~3ヶ月以内に、発熱、腹痛、倦怠感、頭痛、関節痛、皮疹などが生じたときは、かかりつけ医を受診して、海外旅行に行っていたことをお伝えください。