花粉症・ダニ(ハウスダスト)アレルギー


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●スギ花粉症に対する舌下免疫療法について

ダニの舌下免疫療法との併用も可能となりました。
2024年のスギ花粉症の舌下免疫療法の開始日はゴールデンウィーク明けから12月上旬までとなります。
下記Q&AのA4も参照ください。
電話でのお問い合わせが増えてきていますが、医師は電話応対ができませんので、ご質問のある場合はメール(無料)でお願い致します。


●ダニに対する舌下免疫療法について

スギ花粉の舌下免疫療法との併用も併用も可能となりました。
・下記Q&AのA4も参照ください。
・製薬会社の
サイトも参照ください。



参考:
はやりの病気第114回(2013年2月)「花粉と黄砂とPM2.5」
メディカルエッセイ第120回(2013年1月)「セルフ・メディケーションのすすめ~抗ヒスタミン薬~」
マンスリーレポート2012年4月号「セルフ・メディケーションのすすめ~花粉症編~」
はやりの病気第53回(2008年1月)「花粉症の治療はお早めに」
はやりの病気第2回(2005年2月)「花粉症」



Q1 花粉症の治療にはどのようなものがあるのですか?
Q2 目や皮膚もかゆくなるんですが・・・
Q3 日常生活で気をつけるべきことはありますか?
Q4 スギ花粉とダニに対する舌下疫療法とはどのようなものなのでしょうか?
Q5 スギ・ヒノキ以外の花粉、黄砂、PM2.5などに反応するのですが・・・
Q6 注射がよく効くと聞いたのですが・・・





Q1 花粉症の治療にはどのようなものがあるのですか?

A1 標準的な治療で最初に使用するのは第2世代の抗ヒスタミン薬です。これは、従来の(第1世代の)抗ヒスタミン薬に比べると、眠気の副作用が大幅に減少しています。それ以外の副作用もほとんどなく、大変便利な薬です。また、最近は口の中に含むとサッと溶けるタイプのものも普及しており、これだと内服するときの水が不要です。(最近は第2世代の抗ヒスタミン薬の一部が薬局で買えるようになってきています。詳しくは上記コラムを参照ください)

当院で処方することが比較的多い抗ヒスタミン薬の比較

第2世代の抗ヒスタミン薬に次いでよく使われるのがステロイドの点鼻薬です。これも非常に効果があり大変便利な薬です。注意点は、効果が出てくるまでに1~数日程度かかるということです。それと鼻づまりがあると薬が吸収されにくくなるので、やはり早い時期から使用を始めることが大切です。ステロイドの点鼻薬は、1日1回型のものが主流になってきています。最近は、非常に効果が高く、比較的早く効果が現れるものも多く、飲み薬を飲まずに点鼻薬のみで花粉症に対処する人もいます。

一方、速効性のある点鼻薬もあります。これは血管を収縮させる作用のある薬剤で、鼻づまりによく効きます。あまり高頻度に使用すると動悸やめまいなどの副作用が出現しますから、症状の強い方に対してどうしても必要なときだけ短期間に限定して使用してもらうようにしています。

これら以外ではロイコトリエン拮抗薬という飲み薬や漢方薬を用いることもあります。また、下記で述べるように点眼薬や塗り薬を使うこともありますし、症状によっては吸入薬や咳止めを用いることもあります。


参考:鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版
花粉症環境保健マニュアル2022年度版


Q2 目や皮膚もかゆくなるんですが・・・

A2 花粉症は花粉によるアレルギー疾患ですから、鼻だけでなく目にも症状が現れることがあります。また、皮膚に症状の出る人もいます。したがって、全身を見据えた治療をおこなっていく必要があります。通常、目には抗ヒスタミンの点眼薬を使用し、ステロイドの点眼薬までが必要になるケースはそれほど多くはありません。また皮膚症状のある人には期間を限定して弱いクラスのステロイド外用薬を処方することもあります。


Q3 日常生活で気をつけるべきことはありますか?

A3 まずおこなっていただきたいのは、花粉飛散情報を把握することです。花粉飛散情報はいろんなウェブサイトで公開されていますので情報入手はそれほどむつかしくないと思います。様々なウェブサイトで情報が提供されていますが、環境省のホームページ内にある「環境省花粉情報サイトhttp://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/)」が詳しいかと思います。

花粉飛散情報を基本にして、外出時には、マスク・メガネ・帽子の着用をおこないましょう。帰宅したときは、まず衣服についた花粉を取り除き、手洗い・うがい・洗顔をおこなうようにしましょう。

また、家の中に花粉が入らないような対策も必要です。特に寝室は「花粉フリー」のスペースにすることをこころがけてください。窓も開けるべきではありません。しかし換気をしなければダニやハウスダストが増えますから、この対策としては空気清浄機を置きましょう。布団を干すのもNGですから布団乾燥機を使うようにしましょう。部屋が乾くと花粉が舞いやすくなりますから加湿もすべきです。湿度計を買って部屋の湿度に注意することを勧めたいと思います。湿度40~60%を維持するのがいいでしょう。またペットを飼っている人は寝室にはペットを入れないようにして、ペットの毛が付着した衣類は寝室の外で着替えるようにしましょう。



Q4 スギ花粉とダニに対する舌下免疫療法とはどのようなものなのでしょうか?

A4 スギ花粉に対してはスギ花粉を薄めたものを皮下に注射する方法が従来からありますが、長期間の通院が必要なことや重篤な副作用があることなどからそれほど普及していません。そこで、新たに登場したのが「舌下免疫療法」と呼ばれる、アレルゲン(スギ花粉)を口の中に含む方法です。錠剤を舌の下に置いて1分間保持した後飲み込みます。詳しい使用法については診察時にお話いたします。また製薬会社(鳥居薬品)の下記サイトも参照ください。

http://www.torii-alg.jp/



*開始しておよそ6カ月が経過し、問題なく使用できている場合は2カ月処方も可能となります。


*ダニの舌下免疫療法の薬は海外でも処方されています。海外へ転居される方には現地医師への紹介状を作成します。処方されている国は以下の通りです。尚、スギの舌下免疫療法の薬剤は海外では2023年10月の時点では処方されていません。

◆北米: 米国、カナダ
◆ヨーロッパ: デンマーク、チェコ、ハンガリー、ノルウェー、フランス、ベルギー、ドイツ、ポーランド、アイルランド、フィンランド、イタリア、ルーマニア、スウェーデン、オランダ、クロアチア、オーストリア、スイス、ルクセンブルク、スロバキア、スペイン、スロベニア、ロシア
◆アジア: 台湾、韓国、香港、タイ、フィリピン、マレーシア
◆オセアニア: オーストラリア、ニュージーランド
◆中東: サウジアラビア

注:海外での商品名はほとんどの国で「ACARIZAX」、イタリアでは「ACCARIZAX」、米国では「OOACTRA」です。



Q5  スギ・ヒノキ以外の花粉、黄砂、PM2.5などに反応するのですが・・・

A5 関西地方では、2月~4月のスギ、3月~5月のヒノキが最も有名ですが、イネ(4月~10月)、ブタクサ(8~9月)、ヨモギ(10~11月)などの花粉症もあります。その他にも花粉症をきたす植物があります。また、花粉症とは呼びませんが、関西ではゴールデンウィークが明けた頃より黄砂の飛散量が増加し、花粉症と同じような症状で苦しめられる人が年々増えてきています。さらにPM2.5が同様の症状を来すこともあり、年中対策が必要になる人も増えています。「花粉のときは鼻炎と結膜炎だけなのに黄砂のシーズンになると皮膚の痒みが強くなる」、とか、「PM2.5が多い日は咳に苦しめられる」、というように患者さんによって症状は様々であり、そのような多岐に渡る症状や重症度をトータルでみていく必要があります。


Q6 注射がよく効くと聞いたのですが・・・

A6 花粉症の治療としての注射に関するよくある問い合わせは下記の4つです。

1)ヒスタグロビン1V+ノイロトロピン1mL

2017年前半よりなぜか問い合わせ件数が急激に増えているのがこの注射です。花粉症を含むアレルギー性鼻炎に効果があるとするエビデンス(科学的確証)はないものの、一部の人たちから人気があります。
注射の頻度は週に一度、最長で12週間となります(次回開始できるのは注射を始めた日から1年経過した時点となります)。当院では、原則として製薬会社が推奨するこのレジメン(
ヒスタグロビン1V+ノイロトロピン1mL)で注射をしています。費用は1回あたり3割負担で460円です(他に診察代がかかります)。尚、希望されても注射できない場合もあります。


2)ケナコルトなどステロイド

今でも年に10件程度は問い合わせがありますが、このような危険な治療はいくらお願いされても当院ではできません。
シーズン前に一度注射をしておくとそのシーズンはまったく症状が出なくなることもあり、90年代まではしばしばおこなわれることがあった治療法ですが、重篤な副作用が周知されるようになり、その危険性から現在では「やってはいけない」とされている治療法です。

しかし、ときどきこの治療の副作用で受診される人がいます。このような危険な治療を積極的にしている医療機関はないでしょうから、おそらく患者さんの方が強く希望して注射をされたのだと思われます。最も目立つ副作用は、顔がまるくなること(これを「満月様顔貌(ムーンフェイス」と言います)ですが、ニキビができやすくなったり、腹部や大腿に赤い線がでてきたり、自覚症状はないものの高血糖になることもありますし、中長期的には骨粗しょう症のリスクにもなります。また、確定はできないものの、「酒さ」(顔面が赤くなる慢性の炎症性疾患)で当院を受診している人のなかに、花粉症の治療目的でのステロイド注射の経験のある人が少なくありません。重症の花粉症の場合、短期間限定でステロイドの内服薬を使うことがありますが、この場合は長くても数日で体外に排泄されます。しかし、注射の場合は何ヶ月も体内に残存することもあります。ステロイドの注射は「絶対にやってはいけない治療法」と認識すべきです。尚、この注射薬をネブライザーにセットして吸入するのは比較的安全な治療ですが、それをするなら通常のステロイド点鼻薬の方が遥かに使いやすい薬剤です。


3)オマリズマブ(ゾレア)

従来から重症の喘息やじんましんには使われていた薬で、2019年12月から花粉症にも保険で使用できるようになりました。ですが、費用は1回の注射(150mgx2本)で92,980円(3割負担だと約28,000円)もします。これを4週間に一度、合計3回が基本です。診察代も合わせると3か月でおよそ9万円ほどかかりますから誰にでも使える薬ではありません。また、保険適用は「最重症例」に限られますから、希望されたからといって使用できるわけではありません。オマリズマブが適応となり希望される方には処方している病院を紹介しています(当院での処方はおこなっていません)。



4)注射による免疫療法

舌下免疫療法が登場するまでは、実施している機関がそれなりにありましたが現在は減っていると聞きます。当院では開院以来一度もおこなっていません。効果は期待できますが、死亡例を含む重篤な副作用がありますし、舌下免疫療法が当初考えられていたよりも効果が高いことから、注射は今後ますます減っていくと思われます。

参考:
はやりの病気第187回(2019年3月)「誤解に満ちた花粉症情報」



2023年10月1日更新