ぜんそく(喘息)・咳喘息

参考:はやりの病気第159回(2016年11月)「喘息の治療を安くする方法」

増えているアレルギー疾患のなかで、花粉症、アトピー性皮膚炎とならんで多いのが気管支ぜんそくです。近年急速に普及したステロイド吸入薬の成果もあって、副作用を考慮しなければならない内服薬の使用が大きく減少し、気管支ぜんそくは、完治がむつかしいケースはあるものの、適切に薬を使用すれば、コントロールが比較的簡単になってきました。


しかしながら、一方では、医療機関を受診せず、あるいは適切な薬の使用を怠ったがために呼吸困難をきたして救急搬送されたり、最悪の場合は死亡したりすることもありえます。現在の日本でも年間6千人前後の患者さんが気管支ぜんそくで死亡しています。

気管支ぜんそくは、きちんと治療すればほとんどがコントロール可能な病気です。ここでは、日頃患者さんから聞かれる代表的な質問についてまとめてみたいと思います。

Q1 ぜんそくはなぜ起こるのですか
Q2 ぜんそくは増えているって聞いたんですが・・・
Q3 ぜんそくはどのように診断するのですか
Q4 ぜんそくの治療はどのようにするのですか
Q5 主治医の指示どおりに薬を使用していれば発作は確実に防げるのですか
Q6 ぜんそくがあっても海外旅行に行けますか



Q1 ぜんそくはなぜ起こるのですか

A1 ぜんそくは2つの要因が重なったときに起こりえます。ひとつは体質で、遺伝(アトピー因子)によるものです。ですから、両親のどちらかにぜんそくがあって、自分もあるという患者さんは少なくありません。しかしながら、必ずしも、親がぜんそくだから子供もぜんそくになる、というわけではなく、ぜんそくが遺伝するかという質問の答えは「NO」です。

もうひとつの要因はいわゆる「環境因子」で、ホコリやダニ、ペットの毛などを吸い込むことによって起こります。こういった物質(これを「アレルゲン」といいます)が気道のなかに入ると、気道の粘膜が「炎症」をおこします。「炎症」とはその部分の組織が腫れ上がることで、やけどを思い出せばイメージがわくでしょうか。

気道に炎症がおこった結果、気道が細くなってしまいます。このため呼吸が苦しくなって、これが重度になるといわゆる「ぜんそく発作」を起こします。



Q2 ぜんそくは増えているって聞いたんですが・・・

A2 確実に増えています。文部科学省が2006年度に実施した学校保健統計調査(速報値)によりますと、ぜんそくの割合は幼稚園が2.4%(1996年は1.0%)、小学校3.8%(同1.6%)、中学校3.0%(同1.5%)、高校1.7%(同0.8%)となっています。つまりこの10年間で2倍にまで増えています。このうち多くは、高校を卒業するまで、あるいは20代のうちに治癒しますが、それ以降もぜんそくを抱えて生活する人が増えてきています。また、成人してからぜんそくを発症する人も増えてきています。ただし、はやりの病気第159回(2016年11月)「喘息の治療を安くする方法」で述べたように、いい薬が普及したおかげで、喘息の死亡者・入院者は劇的に減少しています。


Q3 ぜんそくはどのように診断するのですか

A3 医療機関を受診すれば比較的簡単に診断がつきます。症状が出ているときは聴診で特有の音が聞かれますし、問診に血液検査やレントゲン検査を合わせて総合的に診断します。

ぜんそくは慢性の疾患で、季節によっても容態が変わりますし、一日のうちでも時間帯によって程度がかわってきます。このため、患者さんによっては、ピークフロー値を測定してもらいます。ピークフローメーターという小さな器具を携帯してもらって、毎日朝晩、その器具に息を吹き込んで状態を計測してもらうことがあります。



Q4 ぜんそくの治療はどのようにするのですか

A4 程度にもよりますが、ごく軽症であれば定期的に薬剤を飲んだり吸ったりする必要はありません。生活環境に気をつけて、いざというときに使えるように、気道を速効広げることのできる吸入薬を携帯してもらいます。

ただし、この吸入薬をあまり頻回に使うようであれば定期的な吸入薬が必要になります。最近は質の良い吸入ステロイド薬が普及したため、ぜんそくのコントロールが随分おこないやすくなりました。「ステロイド」というと何か恐いイメージを持っている人がおられますが、吸入ステロイドはほとんど血中に吸収されませんから副作用を心配する必要はそれほどありません。必要な気道にのみ作用するのです。ただし、口のなかにある程度のステロイドが残りますから使用後はうがいをおこなう必要があります。

吸入ステロイド薬だけでは効果が不充分な状態であれば、さらに別の吸入薬を加えたり、貼り薬や飲み薬を併用したりすることもあります。ステロイドの飲み薬が必要になることはほとんどありません。


Q5 主治医の指示どおりに薬を使用していれば発作は確実に防げるのですか

A5 残念ながらぜんそく発作は、100%防げるわけではありません。それは環境因子に影響を受けるからです。たとえば、普段はまったく症状がないのに、タバコの煙を吸い込んだり、空気の汚いところに行ったりして、突然ぜんそく発作が出現することがあります。このため、速効性のある気管支拡張作用のある吸入薬を携帯してもらうことが多いのです。また、それでも改善しない場合や、呼吸困難の程度が大きい場合は躊躇せずに救急車を呼ぶことが必要です。


Q6 ぜんそくがあっても海外旅行に行けますか

A6 症状が落ち着いていれば海外旅行も可能です。しかしながら、現地で症状が悪化することもありますから、定期薬だけでなく症状出現時の吸入薬や、場合によっては内服ステロイドも持参すべきです。状態が悪化し現地の医療機関を受診しなければならなくなることも想定し、ご自身の薬やこれまでの経過などについて英語で言えなければなりません。一番いいのは、あらかじめ主治医に英文の紹介状を書いてもらってパスポートなどにはさんでおくことです。

また飛行機でも注意が必要です。機内は空気が乾燥しており気圧が低く、喘息発作が生じやすい状態となっています。発作時の吸入薬はもちろん、内服ステロイドも持参しておいた方がいいでしょう。

詳しくは、旅行医学・英文診断書など(http://www.stellamate-clinic.org/kaigai/)を参照ください。



2013年9月20日更新
太融寺町谷口医院
院長 谷口恭