のどの痛み(咽頭痛)

「のどの痛みが引きません」と言って受診される人は少なくありません。「のどの痛み」というのは実に様々な原因があり、もちろん治療法も異なります。軽症であれば、市販の風邪薬で様子をみていて解決することも多いのですが、痛みが長引いていたり、これまでにないような痛みであったり、また他に症状が出現してくるようであれば早めに医療機関を受診すべきでしょう。

ここでは、のどの痛みが生じたときにどのような疾患を考えるべきか、について述べていきます。(下記コラムも参照ください)

参考:はやりの病気
第104回(2012年4月) 「のどの痛み~前編~」
第105回(2012年5月) 「のどの痛み~中編~」
第106回(2012年6月) 「のどの痛み~後編~」


*のどの痛みは、「感染性」と「非感染性」にわけて考えます。



■感染性

 ○ウイルス性咽頭炎(感染性では大半がウイルス性です)

  3つに分類するとわかりやすくなります


1.インフルエンザ以外の風邪のウイルス;ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、コクサッキーウイルス、エンテロウイルスなど。これらは通常「軽症」ですみますからこういったウイルスの有無を調べることは普通はありません。
2.インフルエンザウイルス:疑えば迅速抗原検査をおこないます。15分くらいで結果がでます。
3.EBウイルス、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなど:それほど多いわけではありませんが、稀というわけでもありません。当院でも、年に数例はのどの痛みからこれらの疾患が見つかります。

  
 
 ○細菌性咽頭炎
(重症化すれば多くの症例で抗生物質が必要となります)

1.「一般的な」細菌感染;溶連菌、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌(インフルエンザウイルスとはまったく異なるものです)など
  ●ペニシリン系、セフェム系の抗生剤が用いられることが多いといえます。ニューキノロン、クリンダマイシン、ホスホマイシンなども用いられます。
   ●溶連菌の場合は、抗生物質を比較的長期間(1週間から10日程度)投与しなければならないことが多いといえます。このため疑ったときは15分程度で結果がわかる迅速抗原検査をおこないます。
   ●重症化している場合は、点滴が必要になることもあります。
2.「非定型な」細菌感染;百日咳、マイコプラズマ、クラミジア(ニューモニア)(注1)など
  ●ペニシリン系やセフェム系の抗生物質は通常は無効です。
   ●マクロライド系の抗生物質を使うことが多いですが、最近は耐性化(特にマイコプラズマ)が問題になっています。 ニューキノロン系、テトラサイクリン系を用いることもあります。

注1:クラミジアには、クラミジア・ニューモニア、クラミジア・シッタシ、ク ラミジア・トラコマティスの3種があります。 クラミジア・シッタシはオウムやインコなど鳥から感染します。クラミジア・トラコマティスは性的接触により感染しますが、痛みがでないのが普通です。このため検査は痛みという「症状」に対してではなく「リスク」に対しておこなうべきで、通常は保険適用がなく自費となります。  また、クラミジアと同様、性的接触で感染しうる淋菌性咽頭炎の場合も無症状であることが多いですから検査は自費となるのが普通です。(ただし感染していた場合は保険診療で治療がおこなえます)
3.重症化する細菌感染
  ●急性喉頭蓋炎:短時間の間に呼吸困難に陥ることもあり疑えば入院となります。
     急速に進行するようなときは気管内挿管をおこなうこともあります。
   ●レミエール症候群:内頸静脈にまで炎症が波及して血の塊ができます。疑えば入院となります。


 ○真菌性咽頭炎(稀です。当院には月に1例くらいで、ほとんどがカンジダによるものです)

カンジダ性咽頭炎:ステロイド吸入薬や内服薬を使用している人に生じることがあります。ステロイドの使用がなければ免疫系の疾患(膠原病やHIV)を疑うことになります。


 

■非感染性

 ○亜急性甲状腺炎:動悸と甲状腺に圧痛があるのが特徴です。

 ○無顆粒球症:薬の副作用で白血球がつくられなくなり、そのため病原体が感染するものです。
 原因薬剤としては甲状腺機能亢進症に用いるメルカゾールが有名ですが、精神疾患やてんかんに使う薬剤でも起こりますし、頻度はそれほど多くないものの鎮痛薬や胃薬(市販のものも含めて)でも起こりえます。

 ○虚血性心疾患:他の症状でみつかることが多いのですが、最初の症状が「のどの痛み」のことも稀にあります。

 ○悪性腫瘍:高齢者なら咽頭癌、喉頭癌、若い世代なら白血病や悪性リンパ腫ということもあります。

 ○心因性:意外に多く、不定愁訴のひとつということもあります。

 ○花粉・黄砂・大気汚染(PM2.5含む)などによる咽頭痛:3~5月に咽頭痛が起こればこれらの可能性があります。以前からこの咽頭痛はありましたが、2013年は特に多いような印象があります。

 参考:はやりの病気第114回(2013年2月)「花粉と黄砂とPM2.5」

 
 ○その他:外傷、熱傷(煙を吸い込んだ)、異物(魚の骨など)