HIVの治療・予防(PEP/PrEP)・検査(抗原抗体/NAT)
<当院のHIVの治療(含・自立支援医療)について>
<PEP(曝露後予防)について> (しばらくの間、処方を続けます)
<PrEP(曝露前予防)について> (現在は処方を中止しています)
注意:抗HIV薬の医療機関による輸入ができなくなりました。以前より(当院が最初に問い合わせたのは2012年)近畿厚生局は、医療機関による輸入が認められるのは「治療上緊急性があり、国内に代替品が流通していない医薬品等」としていました。抗HIV薬は「国内に先発品が流通している」わけですから、この規定に従えば当然輸入はできません。
ところが、関東甲信信越局は「医療機関による抗HIV薬の輸入は可能」としていました。当院は同局に2020年12月に電話で確認しました。よって、(近畿がNGとし、関東がOKとしているのは不自然ですが)当院は関東の輸入業者を使って2021年1月から輸入を開始しました。
しかし、関東信越厚生局も考えを変えたようで2023年3月に電話で問い合わせたところ「日本に先発品のある抗HIV薬の輸入は認めない」とのことでした。この根拠は2021年9月10日付の地方厚生局に対する事務連絡(Q&A #47)にあるそうです。
今後、当院ではPEPについては、在庫が残っている輸入品の抗HIV薬後発品を用いて継続します。他方、PrEPはいったん処方を中止します。代わりに、個人輸入を勧めています。個人輸入には偽物をつかまされるリスクがあるため信頼のおけるショップから購入することを勧めます。当院の患者さんからの情報によると、PrEP専用で世界中のPrEPユーザーから利用されているGeen Cross Pharmacyが迅速で価格も安く丁寧な対応をしてくれるそうです。場合によっては英文の処方箋が求められることもあるようです。その場合は当院で作成します。
検査にかかる費用はこちら 》》》 |
◆HIVの検査
◆HIV検査に関するQ&A
◆HIV陽性が判ったとき
◆HIV以外の性感染症について
<当院のHIVの治療(含・自立支援医療)について>
注意:現在自立支援医療の新規受付はおこなっていません。
◆当院の診療内容
#1 抗HIV薬の処方
#2 HIVに関する採血(CD4陽性細胞数、viral load、肝腎機能など):安定していれは6か月に一度の頻度で実施します。
#3 他の疾患の診療:生活習慣病、アレルギー疾患、精神疾患、婦人科疾患、皮膚疾患などHIV以外の疾患・病状についても診察いたします。これらは通常の保険診療(通常は3割負担)となります。
#4 合併症の予防
すでにHIV感染はきちんと薬を内服していればAIDSを発症することはなく「死に至る病」ではありません。では、HIVに感染するとどのようなことに気を付けなければならないのでしょうか。次の4つが相当します。
〇 腎臓の保護:HIVに感染すると腎臓の血管が悪影響を受け、さらに抗HIV薬も腎臓に負担をかけます。腎臓はいったん悪化すると元に戻すことはできず、最終的には人工透析が必要になることもあります。
〇 動脈硬化/心血管系疾患の予防:エイズは防げたのに、心筋梗塞や脳卒中などの心血管系疾患で命を落とすHIV陽性者が少なくありません。禁煙・適正体重の維持、及び生活習慣病の予防が必要です。
〇 HANDの予防:免疫状態が安定していても、HIVに感染すると、HAND(HIV-associated neurocognitive disorders、HIV関連神経認知障害)と呼ばれる認知症を発症するリスクが高くなります。
参考:GINAと共に第117回(2016年3月)「HIVに伴う認知症をどうやって予防するか」
〇 骨折・骨粗しょう症の予防:抗HIV薬の長期使用で骨量が減少することが分っています。なお、これは非感染者のPrEP服用でも同様です。
<PEP(曝露後予防)について>
最近、HIVのPEP(曝露後予防)についての問い合わせが急増しています。誤解も多いようなのでポイントをここで述べておきます。
● 感染したかもしれない時点からできるだけ早く抗HIV薬を開始し、28日間内服を継続することで感染成立を防ぐ方法です。従来は「72時間以内に開始」とされていましたが、2020年以降のガイドラインでは「曝露から長期間(たとえば1週間)が経過した場合であっても曝露後予防を検討してもよい」とされています。
● 日本では、保険適用がなく、費用も高価になるのでこの方法に頼るべきではありません。
●「PEPがあるから危険な行為があっても安心」と考えている人がいますがこれは正しくありません。
● 当院でPEPを実施するのは以下の場合です。
①医療者の針刺し事故(ただし、当院は労災適用の医療機関ではありません)
②性暴力の被害に遭ったとき
③その他、感染の可能性がありやむを得ない場合
● PEPの対象となるアクシデントが起こった時点より前にHIVに感染している可能性がある場合は、先にHIV迅速検査が必要になります。
<PEP薬剤費> 診察代と処方代(650円)が別途必要となります
①TDF/FTC(ツルバダ後発)1錠/日+DTG 50mg(テビケイ後発)1錠/日
1,500円/日(税込)
タイのガイドラインで第一選択の方法です。当院実施のPEPは現在この組み合わせのみです。1日1回のみの服用でOKです。
参考:
Thailand National Guidelines on HIV/AIDS Diagnosis, Treatment and Prevention 2022/2023の該当ページ
②TDF/FTC(ツルバダ後発)1錠/日+RAL400mg(アイセントレス後発)2錠/日
*この処方は1日に2回飲まねばならず費用も高いために、現在は処方を中止しています。
③TDF/FTC(ツルバダ先発)1錠/日+RAL400mg(アイセントレス先発)2錠/日
10,000円/日(税込)+処方代(650円)(税込)
*現在、この処方はおこなっていません。
(参考)
・抗HIV治療ガイドライン2022年3月版
・国立エイズ治療・研究開発センターのPEPのページ
<PrEP(曝露前予防)について>(現在処方を中止しています)
・PrEPはHIV感染を防ぐものです。他の感染症の予防はできません。
・B型肝炎ウイルス(HBV)は理論的に防げる可能性はありますが、そのエビデンスはありません。原則として、PrEPを開始するならHBVのワクチン接種が必要になります。
・C型肝炎ウイルス(HCV)には一切無効です。欧州ではHIVのPrEPが普及したせいで、HCV感染が増えたという報告もあります。
・治療の「合併症の予防」で述べたように、抗HIV薬の内服を継続すると、腎機能障害、骨量低下のリスクが上昇します。腎機能の定期的なチェックは必ず必要です。また、特に体重が少ない人は長期のPrEP内服で骨粗しょう症のリスクが相当上昇することを忘れてはいけません。
参考:GINAと共に第197回 HIVのPrEP(曝露前予防)を安易に始めてはいけない
<デイリーPrEP薬剤費> 診察代と処方代(650円)が別途必要となります
①TDF/FTC(ツルバダ後発)1錠/日 440円/日(税込)
(30日処方の場合:440円x30日+650円=13,850円(税込))
②TAF/FTC(デシコビ後発)1錠/日 550円/日(税込)
(30日処方の場合:550円x30日+650円=17,150円(税込))
③TDF/FTC(ツルバダ先発)1錠/日 5,500円/日(税込)
*現在、先発の薬の取り扱いがございません。
<オンデマンドPrEP薬剤費>(+診察代が必要となります)
①TDF/FTC(ツルバダ後発)4錠 4,400円(税込)+処方代(650円)(税込)
②TDF/FTC(ツルバダ先発)4錠 22,000円(税込)+処方代(650円)(税込)
*現在、先発の薬の取り扱いがございません。
★オンデマンドPrEPとは
性行為の2~24時間前に2錠、最初の服用の24時間後に1錠、2回目の服用の24時間後に1錠、合計4錠服用する方法です。費用を抑えることはできますが完全に推薦できる方法ではありません。IPERGAYと呼ばれるフランスでおこなわれた研究では有効性がデイリーPrEPと変わらないという結果となり、「New England Journal of Medicine」に掲載された論文でも有効性・安全性が示されていますが、米国CDCはオンデマンドPrEPをHIVの予防とは認めておらず、FDAは「デイリーPrEPがFDAの承認する唯一の予防法」としています。また、オンデマンドPrEPを推奨する研究でも、女性及びストレート(異性愛者)の男性は適応外とされています。
(参考)
毎日新聞「医療プレミア」実践!感染症講義 -命を救う5分の知識
2022年12月5日 HIV 予防薬を毎日飲む人が知っておくべき「三つの問題点」
2016年11月27日 HIV感染、事前も事後も薬で防げるが…
NPO法人GINAウェブサイト
「GINAと共に」第197回(2022年11月) HIVのPrEP(曝露前予防)を安易に始めてはいけない
「GINAと共に」第175回(2021年1月) ついに日本でもPrEPが普及する兆し
「GINAと共に」第119回(2016年5月) PEP、PrEPは日本で普及するか
国立国際医療研究センターのSH外来
◆HIVの検査
注意:いずれの検査の場合も検査代以外に診察代が必要になります。
・検査結果については必ず診察室(オンライン診療可能)でお伝えすることになります。の場合、 HIV陽性説明には充分な時間をとっていますが、それでも受け止められずにかなり動揺される方もおられます。検査結果を電話やメールなどでお伝えできないことは予めご承知置きください。
リスクのあった時点から時間的には次のように考えます。
① リスクの直後~数日以内:曝露後予防(PEP)を検討します。
② NAT(PCR, RNA test)
・NATとはHIVを直接感知する検査法で、リスクがあった時点から14日以降経過していれば正確な結果を得ることができます。
・HIV-1型のみ知ることができます。
・結果が出るまでに5-7日程度かかります(結果をオンライン診療でお伝えすることもできます)
・検査代金は15,000円(税込)です。
・HIV陽性の方がウイルス量を調べる目的でこの検査をおこなうときは保険適用になります。
③ CLIA法
・HIVの1型、2型とも判ります。
・料金は3,980円(税込)です。
・この検査で正確な結果を得るにはリスクのあった時点から3~4週間が経過している必要があります。
・12時30分までに受付(予約制)をされると17時30分以降に結果がでます。
④ 第四世代HIV(抗原+抗体)(IC法)
・17時59分までに受付をされると同日に結果をお伝えすることができます。(13時30分までの診察は予約が必要になります) 18時以降に受付をされた場合は翌日に結果を聞きに来て頂くことになります。
・HIVの1型、2型とも判ります。
・料金は3,980円(税込)です。
・この検査で正確な結果を得るにはリスクのあった時点から3~4週間が経過している必要があります。
⑤ WB法
・他の検査で陽性となったときに確実に感染しているかどうかを知るためにおこなう検査です。保険適用となります。
⑥ELISA法
・感染して1~2カ月程度で正確な結果がわかります。(現在当院ではこの検査は扱っていません)
⑦ PA法
・感染してから3カ月程度経過していれば知ることができる検査方法です。(現在当院ではこの検査は扱っていません)
★HIV検査に関するQ&A
次の質問に対するQ&Aを、NPO法人GINA(ジーナ)のウェブサイトに掲載しています。ご参照ください。
Q1 どんな人が検査を受けるべきでしょうか。
Q2 検査はHIVだけでいいの?
Q3 ゲイであれば必ず検査を受けるべきですか
Q4 風俗嬢は必ず検査を受けるべきですか
Q5 感染してから3ヶ月経たないと検査できないって聞いたんですが・・・
Q6 即日検査はどこで受けられますか
Q7 彼氏(彼女)と一緒に行くべきですか
Q8 もしも自分が(あるいは相手が)HIV陽性だと言われたらどうすればいいですか
★HIV陽性が判ったとき
・精密検査およびエイズ拠点病院の紹介
スクリーニング検査で陽性となった場合、精密検査(WB法もしくはPCR/NAT)をおこないます。精密検査で陽性となれば「確定」と診断し、エイズ拠点病院に紹介します(一部の患者さんは当院で治療もおこなっています)。
抗HIV薬の処方をエイズ拠点病院で実施する場合も含めて、HIV陽性の方のプライマリ・ケアは当院で実施しています。
◆HIV以外の性感染症についてはこちらから
(2022年6月18日更新)
「かかりつけ医をもとう」
花粉症対策 / アレルギーの検査 / のどの痛み(咽頭痛) / インフルエンザ / 湿疹・かぶれ・じんましん / 生活習慣病・メタボリックシンドローム / アトピーを治そう / 片頭痛を治そう / 長引く咳(せき) / 不眠を治そう / ぜんそく / 予防接種をしよう / ニキビ・酒さ(しゅさ)を治そう / HIV検査(抗体・NAT)・性感染症・血液感染症 / 水虫がはやっています! / ED(勃起不全)を克服する / 肝炎ワクチンの接種をしよう / 薄毛・抜け毛を治そう / 禁煙外来 / 旅行医学・英文診断書など