不正出血

不正出血とは、性器(特に子宮)からの出血です。不正出血がある場合、まずは原因を特定しなければなりません。不正出血の原因として挙げられるのが、まず妊娠、子宮筋腫やポリープ、悪性腫瘍などのできもの、異物や腟裂傷などの外傷、炎症や感染症、薬によるもの、そしてこれらが原因でない不正出血(機能性子宮出血)などです。
 

妊娠

正常妊娠だけでなく、子宮外妊娠や流産でも不正出血が起こります。また、胞状奇胎といって受精がうまくいかないときに起こる病気でも不正出血が生じます。これらはすべて尿検査で妊娠反応をおこなうと陽性となりますから、正常妊娠も含めてこれらを疑ったときは、当クリニックではまずは尿検査をおこなっています。

腫瘍(できもの)

子宮筋腫やポリープ、あるいは子宮頚癌や子宮体癌でも出血がおこります。当クリニックでは、腟鏡(クスコ)で子宮頸部の状態を視診し、必要であればエコーやMRI(近くの放射線科クリニックで)を撮影してもらうこともあります。

外傷

腟鏡での視診のときに腟壁の状態をチェックして外傷がないかどうかを確認します。異物が原因で腟壁から出血があることもあります。

炎症・感染症

子宮頸部にびらん(ただれ)があり、それが原因で不正出血が起こっていることもあります。当院では、子宮頚部にびらんがあれば子宮頚がんの検査(細胞診)をおこなうようにしています。さらに(性)感染症が疑われるときは、顕微鏡での細菌検査、淋病の検査をおこないます。また、クラミジアについては、即日検査や、場合によっては外部に委託する精密検査(3日程度かかります)をおこなうこともあります。

薬による不正出血

薬によっても不正出血が起こります。まず、挙げられるのが(低用量)ピルです。ただ、ピルと言ってもいろいろあって、最近は三相性(錠剤に含まれている女性ホルモンの量が月経周期によって3段階に異なるもの)のものが普及してきており、三相性のピルであれば飲みだした頃には不正出血があったとしても、飲み続けていくうちに次第に減少していきます。ピルは次に述べる機能性子宮出血に有効なこともありますから、ピルを開始し出した頃の不正出血はほとんどの場合、特に心配する必要はありません。

ピル以外で不正出血をきたす薬剤のなかで、臨床上もっともよく遭遇するのがうつや不安を和らげる目的で飲んでいる薬です。この他では、胃薬や吐き気止め、降圧薬などでも不正出血が起こることがあります。これらの薬剤は、不正出血以外に乳汁漏出が起こることがあるため、もしも乳汁がでてくるというようなことがあればかかりつけ医に相談するようにしましょう(ただし、必ず乳汁漏出があるというわけではありません)。この状態では血中のプロラクチンの値が異常に高くなっていることがあり(これを「高プロラクチン血症」と呼びます)、それを確認するために血液検査をおこないます。

その他では、更年期障害のホルモン療法や婦人科領域の治療薬で不正出血が起こっていることがあります。薬を処方してもらっている医師に相談するようにしましょう。

機能性子宮出血

機能性子宮出血とは、できものや外傷、炎症などがない場合の子宮からの出血のことです。これらは2つに分類することができます。ひとつは排卵がない場合(これを無排卵性機能性出血と呼びます)、もうひとつは排卵がある場合(排卵性機能性出血と呼びます)です。
無排卵性機能性出血は、簡単に言えば女性ホルモンのバランスの乱れによっておこります。思春期と更年期に多いのが特徴です。

思春期はまだ女性ホルモンの分泌が不安定であり、初潮後2年程度は排卵が起こっていないという報告もあります。思春期の不正出血はほとんどがこのタイプの出血です。放っておいても自然に治癒することがほとんどですが、不快感の強い場合は一時的にホルモン剤を飲んでもらうこともあります。

更年期にも女性ホルモンのバランスが乱れますから、これが原因となり無排卵性機能性出血が起こります。また、ホルモン補充療法を受けることにより機能性出血が起こることもあります。更年期の機能性出血は、ときに出血量が多量になることがあり、この場合、外科的に子宮内膜を掻爬したり、レーザーやマイクロ派で内膜を焼いたりすることもあります。

一方、20代から40代の機能性子宮出血は、排卵性機能性出血の方が多いという特徴があります。排卵性機能性子宮出血は、出血の時期別に次の3つに分類することができます。

①生理の後ダラダラと続く出血(卵胞期出血)
②排卵の前後で起こる出血(中間期出血)
③排卵後ダラダラと続く出血(黄体期出血)

①の卵胞期出血は、女性ホルモンのひとつであるプロゲステロンがいつまでも分泌されることが原因です(プロゲステロンは排卵後にたくさん分泌され、生理の直前に一気に減少するホルモンです)。卵胞期出血が起こるときは、生理が7日以上ダラダラと続いていることが多いという特徴があります。この出血を止めるには、別の女性ホルモンであるエストロゲンを内服するのが有効です。エストロゲンの濃度が上がると、相対的にプロゲステロンの濃度が低下するからです。

②の中間期出血は、排卵直前に女性ホルモンのエストロゲンが急激に低下することによって起こります。このタイプの出血では通常治療をおこないませんが、出血量が多く不快感が強いときには、止血剤を内服してもらうこともあります。

③の黄体期出血は、プロゲステロンの分泌が充分でないことが原因で起こる出血です。ひどい場合は中用量ピルを内服してもらうことがあります。

太融寺町谷口医院の検査と治療

太融寺町谷口医院では、不正出血の患者さんに対して、まずは原因を明らかにしていき、その上で治療をおこないます。CTやMRIといった画像撮影、子宮内膜の掻爬、子宮外妊娠やがんの手術といった専門的な検査や治療が必要なときは、他の専門クリニックや総合病院を紹介しています。


2007年1月22日
太融寺町谷口医院
院長 谷口恭